5月の雇用創出は過去数カ月間に4,200万人が職を失った後、わずか240万人だった…

 アトランタ地区連銀の発表しているGDPNowをみると、4-6月期のGDP(国内総生産)はマイナス45.5%となっている。

アトランタ地区連銀のGDPNow

出所:アトランタ地区連銀

 米著名投資家マーク・ファーバーは、

【企業収益が2019年末の絶頂に戻ることはまずないだろう。こうした不都合なファンダメンタルズを相殺しているのがFRB(米連邦準備理事会)をはじめとする中央銀行が世界経済を水浸しにしている各種支援策と流動性の波である。米国では、可決した「家族第一コロナウイルス対策法」「コロナウイルス支援・救済・経済安全保障法(CARES法)」「給与保護制度・健康医療強化法」さらに「健康・経済回復一括緊急解決法HEROES 法)」を合わせると約7兆ドルにも及ぶ。」「ところが、こうした拡大する金融・財政政策に経済がどう反応するか分からない。グッゲンハイム・インベストメンツ社(訳注:米金融会社グッゲンハイム・パートナーズの資産運用部門)では「U」字が横に伸びたような回復になるとみている(図5)。もちろん「V」字回復の可能性も完全に排除すべきではない。しかし、私が考えているのは、V字やU字の回復があるかに関係なく、米国経済はおそらく何年にもわたり完全には回復しないことである。つまり、数年間はまず、図5にあるような潜在GDP(国民総生産)のラインに戻りそうにないのだ。】

 と述べている。

米国の景気回復はV字かU字か?

出所:マーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート(パンローリング)

 ヌリエル・ルービニ ニューヨーク大学教授は、シュピーゲル誌のインタビューで「株式市場は自分自身を欺いている」と述べ、実際の失業率は公式の数字よりもはるかに高いと警鐘を鳴らしている。

インタビュワー:巨大な経済刺激策が出されているが、V字型の回復を信じていないのか? 結局のところ、5月に米国で250万人の新しい雇用が再び創出されたではないか。

ルービニ:もちろん、今年の後半は上昇するだろう。しかし、それは本物ではなく妄想だ。経済は非常に急激に低下しているので、ある時点で当然再び持ち直す。しかし、それは(今回の)クラッシュを補うことはできない。

 2021年末になっても、米国経済は2020年初頭の水準を下回るだろう。あまりにも多くが壊れた。そして、失業率は16%または17%の水準に落ち込んだが、前回の金融危機の間はわずか10%だった。5月の雇用創出は、過去数ヶ月間に4,200万人が職を失った後、わずか240万人だった。そして、実際の失業率は公式の数字よりもはるかに高い。

出所:独シュピーゲル誌

 米経済はよくて「U」字型の回復というのが景気の実態である。それでも各種支援策と流動性の波から米大統領選までは相場は上がるという声が多い。現在は社会主義政策という給付金バブル相場なので、その可能性もあるが、米議会が毎週600ドルの失業給付を7月以降も延長させるかどうかが焦点となるだろう。