香港人権法成立で、米中対立は激化に向かうか

 トランプ米大統領は27日、米国議会(上下院)が圧倒的多数で可決した「香港人権・民主主義法」に署名しました。当初、中国との部分合意を目指す中で、署名を躊躇する発言をしていましたが、さすがに米国の与野党が一致して圧倒的多数で可決した法律を、大統領権限で拒否することは、できませんでした。

 トランプ大統領は当初、香港の人権運動も習近平国家主席との交渉もどちらも大事だと述べ、米中対立をエスカレートさせかねない法律への署名に躊躇しているのが、明らかでした。結局、法律に署名し、中国はそれに対して、報復を示唆しています。米中対立エスカレートが避けられなくなったように見えます。

 ただし、この事態に至っても、金融市場は今のところ冷静です。人権法成立後の29日の米国市場で、NYダウはわずか112ドル(0.4%)しか下げませんでした。中国政府も、すぐには報復措置を発表していません。

 あくまでも推測にすぎませんが、トランプ大統領が法律に署名する前に、米中対立をエスカレートさせないようにするために、なんらかのメッセージを中国側に送っていた可能性もあります。人権法でもめるのを避けて、あくまでも、年内の部分合意を目指す考えが伝わっているのでしょうか。

 真偽のほどは、今週、米中政府から、どのような発言が出るかによって分かると思います。年内部分合意を目指して交渉を継続するのか、報復合戦を再開するのか、米中双方からどういう発言が出るかに注目されます。