流行のMMT(現代貨幣理論)の概要と注意点

 MMT(現代貨幣理論)議論が騒がしい。MMTはオカシオ・コルテス米下院議員が流行らせた、赤字垂れ流しを肯定する経済理論である。

※MMT:「財政は赤字が正常で黒字のほうが異常、むしろ、どんどん財政拡大すべき」という、これまでの常識を覆すような理論である。この理論にアメリカ民主党29歳の新星で、将来の女性初大統領ともいわれているオカシオ・コルテス議員が支持を表明したことで、世論を喚起する大きな話題となっている。

 先進国はデフレの環境にある。日本を見れば分かるように、赤字を垂れ流してもインフレにならないから、インフレになるまではもっと国債が発行できるし、ハイパーインフレになどならないというのがMMT論者の主張だ。国債を発行すれば負債は増えるが、資産も増えるといういわゆる「両建て経済」の理論で、これをやると歯止めがなくなり、政治家や政商の利権や私腹肥やしに悪用される可能性が高いだろう。そして、格差の拡大が縮小するどころか、さらに拡大するといった副作用が出てくるだろう。

 オカシオ・コルテス議員は正義感からMMTを主張し、環境問題などに取り組む姿勢を示しているが、その理論的支柱は米国の社会主義者サンダース氏とその経済顧問のNY州立大学のステファニー・ケルトン教授である。

 オカシオ・コルテス議員は財政出動が重要で、QEでは賃金は上がらないと主張している。しかし、これは机上の空論だろう。オカシオ・コルテス議員は日本が借金をどれだけ増やしても財政破綻していないから、財政赤字を気にする必要はないという。

 しかし、日本は30年間巨額の財政出動をおこない、MMTもどきの政策を続けてきたが、全然景気は良くなっていないではないか? それに日本は米国と違って債権国であり、債務国の米国がこのような政策を採用すれば、ドルの急落や金利の急騰を招きかねない。

日経平均(月足)

 日経平均株価と日本の賃金を見ればMMTの答えは出ている。中間層の没落だ。

出所:石原順

 債券王のジェフリー・ガンドラック氏は、「MMTに関してどう思うか?」という質問に対して以下のように答えている。

「すでにどんな考えも許容されるところにこの世の中は来ている。日本は負債をものすごく増やした。しかしその結末としては30年前の株式市場の最高時から30年たってもまだ半分しか回復していないということ以外何もない。ゼロ金利、国の負債の増加、経済的に成功していないという事実の間に何か相関があるのだろう。フェアで機会がある良い社会を作ろうというのがMMTであっても、実際には結果は逆となり、本当の問題を見過ごしているに過ぎない。」

 

セミナーのお知らせ

楽天証券【札幌開催】FXセミナー

難易度:初~中級者向け

 FXセミナーを2019年6月15日(土)に札幌で開催いたします。 

 これからFXを始めようと考えている初心者の方向けの用語解説から、チャートの見方、為替相場展望に至るまで、3名の国内著名講師陣による充実のラインナップでお届けします。