日銀、国債買い入れ減額と追加利上げ同時なら円高?引き締め不足なら円の失望売りも

 4月終わりに1ドル=160円台を付けた時の米10年債利回りは4.6%台で、現在は4.2%台となっているにもかかわらず、1ドル=160円に迫ろうとしています。米金利との連動性が希薄になってきている動きをしていることから、今回の円安は日銀政策への催促相場ともいわれています。

 日銀の植田和男総裁が4月に円安容認と取れる発言をしたことで円売りが加速しました。マイナス金利解除後の利上げの道筋が不透明であり、さらに長期国債の買い入れ減額については事前報道されていたにもかかわらず方針決定が先送りされたため、日銀の政策変更に対する慎重姿勢が消極姿勢と捉えられ、市場に円売りの安心感を与えているようです。

 24日に公表された6月の日銀会合の「主な意見」では、物価や賃上げの広がり次第で、早期の追加利上げに前向きな意見が相次いだことが分かります。また、7月利上げも排除しない意見も出たようです。

 次回の7月30~31日の日銀会合では、国債買い入れについて、今後1~2年程度の具体的な計画が決定され、その減額は「相応の規模」であることを植田総裁は示唆しています。また、7月の利上げについて、植田総裁は18日の国会答弁で「場合によっては十分あり得る」と発言しています。

 市場では、国債買い入れ減額と追加利上げの同時実施は考えにくいとの見方が多いようですが、植田総裁は「国債の買い入れ減額と政策金利の引き上げは別のもの」と強調しています。

 これらの発言通り、7月の会合で「相応の規模」の国債買い入れ減額が決定され、利上げが同時に実施されれば円高に動く可能性は十分あると思われます。

 ただし、追加利上げの道筋が示されなければ円高は一時的な動きになるかもしれません。また、利上げ見送りとなったり、市場が期待するほどの減額規模でなかったりした場合は、失望感から円売りの勢いがつくかもしれないため注意する必要があります。

 7月の日銀会合前には、1日に日銀の短観(企業短期経済観測調査)が公表され、8日には支店長会議があります。短観では企業の物価見通しがどのように変化しているか注目です。支店長会議では、地方の景況、賃上げの浸透、物価上昇の影響などを確認することができます。

 そして物価指標では、6月28日に全国CPI(消費者物価指数)の先行指標となる東京都区部6月CPIが発表されます。7月19日には6月全国CPI、26日には東京都区部7月CPIが発表されます。これらのデータを踏まえて、日銀がどのような決定をするのか注目です。7月は日銀の正念場の会合となりそうです。

7月米利下げ期待、物価指標次第で再浮上も

 しかし、円高の転換を探るとすれば、現時点では日銀要因よりもFRB(米連邦準備制度理事会)要因の方が大きいと思われます。7月のFOMC(連邦公開市場委員会)は30~31日と、日銀会合と同日開催となりますが、時差の関係で日銀の方が早い決定発表となり、それまでは米国の雇用、物価、景気動向の指標で相場が左右されそうです。

 また、28日にFRBが注目する物価指標、変動の激しい食品とエネルギーを除いた5月コアPCE(個人消費支出)価格指数が発表されます。前月からの低下予想となっていますが、CPIに続き予想通りの低下となれば、後退していた7月利下げ期待が浮上してくるかもしれません。金利はさらに低下し、ドル高は小休止となる可能性があります。しかし、逆の場合は、1ドル=160円突破のきっかけになるため注意する必要があります。