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 FRB(米連邦準備制度理事会)が金融政策の運営において課せられている法的使命は「物価の安定」と「最大限の雇用」の達成であり、これはFRBのデュアル・マンデートと呼ばれている。

 デュアル・マンデートを具体的な数字で示すならば、「物価の安定」とは、コアPCEが2.0%の水準だ。(2024年4月 = 2.8%)PCEとは個人消費支出の略で、米国の家計が購入した財やサービスを集計した経済指標のことである。そのうち変動の激しい食品とエネルギーを除いた数字をコアPCEという。

「雇用の最大化」とは、失業率がNAIRU(Non-Accelerating Inflation Rate of Unemployment:非加速的失業率)の水準で、FRBはこれを4%と見積もっている。パウエルFRB議長の理想は、失業者を出さずにインフレ目標を達成することである。失業率は自然な人口動態と労働力の変化によって上昇させる。しかし、この理想の実現は非常に困難である。

 雇用統計による米国の失業率は、2022年から3.7%前後で安定している。FRBは「雇用の最大化」を達成した。残るは「物価の安定」、すなわち労働市場を動揺させることなくインフレ率を下げることだけだ。

 5月のCPI(消費者物価指数)は前年比3.4%で、2022年6月のピーク時から1/3になった。ベース効果とガソリン価格の下落が大きな理由。しかし年後半はベース効果がなくなり、エネルギー価格も今後も低価格が続く保証はない。

 一方で賃金上昇率は4.0%以上で高止まり、賃金と物価のスパイラルの脅威にも直面する。FRBはインフレとの戦いに勝利したのだろうか?もしFRBがコアPCEに注目しているならば、決してそうではない。

 FRBの政策金利はおそらくピークに達したと思われるが、大事なことは、利上げ終了と利下げは全くの別物だということだ。CPIが予想に反して下げ止まっていることを受けて、FRBは長期間にわたる高金利の維持と、労働市場の大幅な調整が必要との認識を新たにしたことだろう。FRBが勝利宣言を出すのはまだ先のことだ。

今週の注目経済指標

出所:楽天証券作成