日本株は「派手さ」はないが、着実に復調

 続いて、先週の日本株の動きについても確認していきます。

図6 日経平均(日足)とMACDの動き(2024年5月17日時点)

出所:MARKETSPEED IIを基に筆者作成

 先週の日経平均も、前週に続いて75日移動平均線を挟んだ攻防が続く中、株価が上昇していく展開となり、「派手さ」はないものの、着実に復調している格好です。

 ただ、冒頭でも述べたように、先週末17日(金)の株価は、3月高値と4月安値の下げ幅の半分(50%戻し)のところに位置しており、最高値を更新した米国株市場と比べると、確かに株価の戻りの勢いが鈍くなっています。

 目先の焦点は、「日経平均が50%戻しを超えて、さらに上昇して行けるか?」になりますが、チャート上から読み取れるポジティブなサインは、下段のMACDが上向きを続けており、「0円」ライン超えを射程圏内に捉えていること、ネガティブなサインとしては、直近のローソク足の並びが「上昇ウェッジ」っぽい形状になっていて、下落する展開も想定されることです。

 ただ、あらためて先週の日本株の上昇幅を確認すると、日経平均が558円(1.46%)高、TOPIX(東証株価指数)は17p(0.62%)高となっています。同じく、米株価指数の週間の上昇幅は、NYダウが491ドル(1.24%)高、S&P500が81p(1.55%)高、NASDAQが345p(2.11%)高となっています。

 確かに、TOPIXの上昇は米国株指数と比べると出遅れている感がありますが、米国のグロース株の動きの影響を受けやすい日経平均はそこまで出遅れている感じはなく、今週のエヌビディア決算の米国株(特にNASDAQ)の反応次第では、日経平均が一段高する可能性は十分にあると考えられます。

ただし、日本株上昇のハードルは意外と多い?

 そのため、今週の日本株については、最近まで優位だったTOPIXよりも日経平均への注目度が高くなりそうですが、同時に日本株の上値の重たさのポイントについても整理しておく必要があります。

 例えば、前回のレポートでも紹介した、信用買い残の需給要素がまだ戻り待ち売り圧力として残っていることや、日米の金融政策の方向性が緩和を向いている米国と、引き締めが想定される日本とで異なり、日本株への積極的な買いは以前よりも後退する可能性があることなどです。

 また、決算シーズンを経て、日本株の業績期待が盛り上がっていないことも挙げられます。この点については、日本企業の多くが期初の決算でガイダンス(業績見通し)を慎重に設定する傾向であることが影響している面もあり、時間の経過とともに業績の上方修正が増えてくれば、いずれ再評価される可能性は高いですが、当面の買い材料にはなりにくい状況が続きそうです。

 その他、意識しておいた方が良いかもしれない点として、香港株市場の動きがあります。

図7 香港ハンセン指数(日足)とMACDの動き(2024年5月17日時点)

出所:MARKETSPEED IIを基に筆者作成

 上の図7を見ても分かるように、足元の香港ハンセン指数の株価の上昇が際立っています。上昇の起点となっている4月19日は、日経平均や米国株価指数と同じ日ですが、香港ハンセン指数の戻りの勢いがいちばん強くなっています。

 最近の中国では、経済指標が改善を示すものが増え、中国経済に対する悪材料の出尽くし感が出始めていることや、相次いで打ち出される経済政策期待などがその理由として考えられます。

 これに伴い、足元の香港ハンセン指数の上昇が、これまでの日本株上昇の要因のひとつとなっていた、「外国人投資家による中国から日本への資金シフト」の流れが一部で巻き戻されている可能性も考えられます。

 したがって、日本株が一段高して行くためのハードルは意外と多く、目先は3月の高値(4万1,087円)に向かう場面があったとしても、そこから先を目指す展開をイメージするのは難しいかもしれません。