※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「【テクニカル分析】今週の日経平均&株式市場 日米金融政策イベントでどうなる?~動くのは「森」か「木」か~<チャートで振り返る先週の株式市場と今週の見通し>」
今週は、米国のFRB(米連邦準備制度理事会)がFOMC(米連邦公開市場委員会)を11日(火)から12日(水)に開催するほか、国内でも日本銀行が金融政策決定会合を13日(木)から14日(金)にかけて開くなど、「金融政策イベント」ウィークになります。
基本的な今週の相場シナリオは、こうした日米の金融政策イベントの動向を見極めつつ、主に以下がポイントになります。
- 米FOMCの結果が出てくるまでは様子見の可能性が高そう
- 今回の米FOMCでは政策の変更はない見込み
- パウエルFRB議長の記者会見で米利下げ開始時期の言及があるかが焦点
- 米利下げ観測が後退しなければ、イベント通過で全体的に株価が上昇しやすい
- 日銀会合では何らかの政策変更(国債購入額の減額など)があるかに注目
このあとも、チャートをいくつかチェックしていきますが、先週の米国株市場では、利下げ観測の高まりによって、S&P500種指数やNASDAQが最高値を更新する場面を見せるなど、相場の地合いは米金利の動向に敏感に反応しやすくなっています。それだけに、とりわけ米FOMCの行方が市場のムードを左右することになりそうです。
市場では、米FOMC通過後の米利下げ観測が、「維持・前進すれば買い」、「後退すれば売り」といった具合に、市場全体として方向感が明確になってくるという見方が優勢ですが、実際のところ、株式市場の反応はそう単純なものではないかもしれません。
そこで、今回のレポートでは、どこに注意を払ったら良いのかなどについて確認して行きたいと思います。
まずは、先週の日本株の状況から見て行きます。
意外に「ちぐはぐ?」だった、先週の日本株
図1 日経平均(日足)とMACDの動き(2024年6月7日時点)
先週末6月7日(金)の日経平均株価終値は3万8,683円でした。前週末終値(3万8,487円)比では196円高、週間ベースでは3週ぶりに上昇に転じています。
ただし、上の図1の通り、チャートの形状自体は前回とあまり変わっていません。75日移動平均線に沿った株価推移が継続し、株価の上値は75日、下値は25日の2本の移動平均線に挟まれたわずかな範囲内での動きにとどまったほか、下段のMACDの傾きがほぼ横ばいで、「0円ライン」の攻防が続いています。
つまり、先週の日経平均は、「週間ベースで株価が上昇したほどの強さを見せていなかった」と言えます。
その一方、TOPIX(東証株価指数)についてもあまり状況は変わっていませんが、日足チャートから受ける印象は日経平均とは異なります(下の図2)。
図2 TOPIX(日足)とMACDの動き(2024年6月7日時点)
先週末7日(金)のTOPIX終値は2,755pでした。
前週末終値(2,772p)からは下落したものの、25日移動平均線が下値のサポートになっているほか、週初3日(月)の取引時間中には節目の2,800p台に乗せる場面があるなど、上値を試す動きも見られました。
また、4月終盤以降のTOPIXは、図2にも描かれているように、「ネックライン」が抵抗となる形で、度々上値をトライしています。今週以降の株価も再びネックラインへ向かうのであれば、3月22日の直近高値を超える可能性があるほか、1989年12月18日につけた史上最高値(2,884p)も視野に入るところに現在の株価は位置しています。
そのため、先週のTOPIXは、「週間ベースで株価が下落した割には、意外としっかりしていた」と言えます。
このように、先週の日経平均とTOPIXの動きを振り返ると、相場の方向感に欠けているという共通点はありますが、チャートから受ける印象は異なるという、「ちぐはぐ」さがあります。