7月相場入りした先週の株式市場ですが、週末5日(金)の日経平均株価終値は4万0,912円でした。

 また、この日の高値は4万1,100円をつけており、3月22日の高値(終値で4万0,888円、取引時間中で4万1,087円)をそれぞれ上回って史上最高値を更新してきたことになります。

 TOPIX(東証株価指数)も、週初の1日(月)に3月22日の高値(2,820p)を超え、4日(木)には1989年12月の高値(2,884p)も上回るところまで上昇し、こちらも史上最高値を更新しています。

 そのため、今週の株式市場は上昇基調の流れが継続し、さらなる上値をトライできるかが焦点になるわけですが、そこで、今回のレポートでは、「日経平均とTOPIXがどこまで上を目指せるのか?」について、チャートから読み取れる情報や、相場の勢い、買い材料などの観点から整理して行きたいと思います。

日本株は最高値更新も「強さ」が試されるのはこれから

 早速、足元の日経平均とTOPIXの状況を日足チャートでチェックして行きます。

図1 日経平均(日足)とMACDの動き(2024年7月5日時点)

出所:MARKETSPEEDIIを基に筆者作成

 上の図1でも確認できますが、ここ2週間の日経平均の値動きは、これまで意識されてきた75日移動平均線から上放れる格好で、スルスルと上昇しているように見えます。

 また、25日と75日の2本の移動平均線の「ゴールデン・クロス」の出現や、下段のMACDの線の傾きが上向きを強めていることなどからも、相場が上目線になりつつあることがうかがえます。

 もっとも、前回のレポートで指摘した通り、「高値の更新は容易い」ことは想定していましたので、ここまでの株価上昇自体にあまり驚きはありません。

 敢えて、上の図1で気になる点を挙げるとするならば、株価が高値を更新する一方で、MACDの値は前回高値の3月の時と比べると、まだ低い位置にあり、現時点で「逆行現象」の状態となっていることです。

 株価が高値や安値を更新する一方で、MACDが上値や下値を更新できない「逆行現象」は、トレンドの転換を示唆することが多いとされているため、逆行現象を解消するには、引き続き株価の上昇が続いて、MACDの上昇を継続させていく必要があります。

 こうしたチャートの読み方はTOPIXでも同様です(下の図2)。

図2 TOPIX(日足)とMACDの動き(2024年7月5日時点)

出所:MARKETSPEEDIIを基に筆者作成

 TOPIXも、株価とMACDとのあいだで逆行現象の状況となっています。

 また、3月にTOPIXが高値をつけた場面を見ると、3月12日、3月22日、4月5日の3つを頂点とする「トリプル・トップ」を形成しているように見えますが、その際に描かれる「ネックライン」が、以降の株価が先週を含めて、上値の「抵抗」として機能していることが分かります。

 そのため、今週のTOPIXについては、株価がこのネックラインを上抜けて、これまでの「抵抗」から「支持(サポート)」として役割を変えられるかが注目されることになります。

 このように、日経平均もTOPIXも、「強さが試されるのはこれから」ということになります。

「新値は買い」という相場格言

 また、相場には「新値は買い」という格言があります。

 格言に従うのであれば、日経平均とTOPIXが最高値を更新している現在の状況は、まさに買い場ということになるわけですが、この格言の背景には、「これまでの高値を更新するということは、相場に勢いと買い材料が存在している」という考え方があります。

 そこで、相場の「勢い」について探っていきます。

図3 日経平均(日足)のボリンジャーバンド(2024年7月5日時点)

出所:MARKETSPEEDIIを基に筆者作成

 上の図3は、前回のレポートでも紹介した、日経平均日足のボリンジャーバンドですが、前回よりも色々と書き込みが増えています。

 前回では、バンドの幅が狭くなる「スクイーズ」に注目し、「市場のエネルギーが溜まっている状況なので、いざ相場が動き出すと、動き出した方向に勢いが出やすい」点について指摘していましたが、先週の株価上昇によって、今回は上方向に勢いが出始めていると言えます。

 実際に、図3では株価がバンドのプラス2σ(シグマ)に沿って動いている様子がうかがえ、バンドの幅も上下に拡大する「エクスパンション」の状況となっています。

 となると、次の相場の視点は「では、どこまで上昇の勢いが続きそうなのか?」へと移っていきますが、ボリンジャーバンドでは、そのヒントを探る見方があります。

 具体的には、「相場が動き出している反対側のバンドの向きが変わると、トレンドが一服しやすい」というものです。現在は、株価がプラス2σに沿って動いているため、反対側のマイナス2σの向きが下向きから上向きに変わるところがポイントになります。

 ただし、あくまでもトレンドが一服するだけで、必ずしもトレンドが転換するとは限らない点には注意が必要です。

 図3のチャートを過去に遡ると、バンドの幅が拡大してトレンドが発生している中で、反対側のバンドの向きが変わったポイントを2カ所描いていますが、4月の時は下落トレンドからの上方転換、1月の時は、上昇トレンドが一服した後にしばらくもみ合いが続き、上昇トレンドが再開していたことが分かります。

 したがって、現在は「マイナス2σの向きが変わるまでは上目線継続」となり、そして、向きが変わった後に「トレンドが転換するのかどうかを見極めて行く」ことになります。

株式市場の「勢い」と「買い材料」

 先ほどの図3でも見てきたように、現在の日本株市場は今のところ、上を目指す「勢い」が感じられるわけですが、この勢いを言い換えるのであれば、「相場が強いか弱いか」という視点で捉えることを意味します。

 続いて確認する「買い材料」については、「株価が高いか安いか」という視点になります。

図4 日経平均(日足)と予想PERの推移(2024年7月5日時点)

出所:MARKETSPEEDIIおよびQUICKデータを基に筆者作成

 上の図4は、日経平均日足と、日経平均の(予想)PER(株価収益率)の推移を示したものです。

 先週末5日(金)時点の予想PERは17.28倍となり、5月以来の17倍台に乗せています。PERは「株価÷1株あたり利益」で計算され、株価と企業の稼ぐチカラを比較したものになります。

 日経平均のPERは概ね12倍から16倍台のあいだで推移することが多く、直近3年間の平均も14.11倍です。

 先ほどの「株価が高いか安いか」という視点では、17倍台に乗せた足元の株価は割高になりつつあると言えます。

 今後も株価の上昇基調を維持していくためには、好調な企業業績などの裏付けが必要となってくるわけですが、まもなく日米企業の決算発表が本格化していくタイミングでもあります。

 今週も国内では、ファーストリテイリング(9983)セブン&アイ・ホールディングス(3382)ローソン(2651)良品計画(7453)といった消費関連企業が決算を発表し、米国でもJPモルガン・チェース(JPM)ウェルズ・ファーゴ(WFC)シティグループ(C)といった大手金融機関の決算が予定されています。

 今後、良好な企業業績や業績見通しの上方修正が増えてくれば、1株あたり利益も増加していくため、現在の割高なPERも正当化されることになります。