EVに必要な金属は南半球にある

 イエメンに拠点を置き、紅海において航行の妨害を行っているイスラム武装組織「フーシ派」は、イランの支援を受けているとされています。資金や軍事関連の物資・技術などの支援を受け、西側諸国と関わりが深い船舶を妨害しています。非西側諸国の急先鋒ともいえるイランが背後にいる以上、紅海での妨害問題は西側・非西側の分断と無縁ではありません。

 ここから触れるEV(電気自動車)のバッテリーの原材料であるコバルト、リチウム、ニッケル、グラファイト、マンガンといった鉱物資源の埋蔵国もまた、西側・非西側の分断が確認できるテーマです。以下の図は、これらの鉱物資源の主要な埋蔵国の分布を示しています。

図:EVバッテリー資源の埋蔵量上位国(2022年)

出所:USGSのデータをもとにmap chartを使用して筆者作成

 ロシアやトルコ、キューバなど北半球の国々でもEVのバッテリー資源を有していることが分かりますが、埋蔵シェアは南半球の国々が圧倒的に高いことが分かります。南米、アフリカ南部、東南アジアなど「南」と付く大陸の要衝となる地域が、われわれ西側のEV促進、ひいては脱炭素の命運を握っていると言っても過言ではありません。

コバルト:コンゴ民主共和国48%、オーストラリア18%、インドネシア7%など
リチウム:チリ36%、オーストラリア24%、アルゼンチン10%など
ニッケル:豪州21%、インドネシア、21%、ブラジル16%、ニューカレドニア7%など
グラファイト:ブラジル22%、マダガスカル8%、モザンビーク8%、タンザニア5%など
マンガン:南アフリカ38%、オーストラリア16%、ブラジル16%など