植田チャレンジング発言で早期修正織り込みは過剰反応

 冒頭でご案内しましたが、12月7日の日銀の植田総裁の「チャレンジング」発言に関して、早川氏から12月9日にコメントをいただきました。

 植田氏は7日午前の参議院財政金融委員会の質疑で今後の業務全般の取り組みへの所見を尋ねられたことに対し、「チャレンジングな状況が続いているが、年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になるとも思っている」と答弁。市場ではマイナス金利解除が前倒しされるのではないかとの思惑が高まり、7~8日の円相場は円高に振れました(経緯はこちらの記事「植田チャレンジング・ショックでドル/円、一時141円。来年は円高?」でも触れています)。

 早川氏はインタビューでも語ったように、マイナス金利解除が来年4月になるとの見立ては変わらないとした上で、

 マーケットは明らかに過剰反応で、長い眼で見れば、来年中に1ドル=130円程度の円高はあり得るかもしれませんが、今一気に円高が進むというのは考えにくいです。

 植田総裁の「チャレンジング」発言は、「来年はいよいよデフレ脱却、金融正常化の年」という覚悟が口に出たのでしょうが、やや不用意でした。

 同時に、マーケットは米国の早期利下げも過度に織り込んでいると思います。

 そうした点が重なって過剰反応になったのでしょう。

(聞き手はトウシル編集チーム・田嶋啓人)

 早川英男氏(はやかわ・ひでお)1954年生まれ。東大卒。1977年日銀。調査統計局長、名古屋支店長、理事などを歴任。日銀時代は20年以上リサーチ部門に在籍し、マクロ経済情勢の判断に携わる。富士通総研経済研究所を経て、2020年から東京財団政策研究所主席研究員。

 著書に『金融政策の「誤解」“壮大な実験”の成果と限界』『コロナショックの経済学』(共著)など。

 

 

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