日本では「良いインフレ」に

 一方、日本には欧米に大きく遅れて今、ようやくインフレの風が吹き始めました。総合インフレ率は昨年12月時点で、4.0%まで上昇しました。これが、企業業績・株価に強い追い風になると考えています。

日本のインフレ率:2022年12月

出所:総務省統計局より作成

日本の総合インフレ率、コアコア・インフレ率推移:2020年1月~2022年12月

出所:総務省統計局より作成

  楽天証券経済研究所では、東証プライム上場3月期決算主要841社の連結純利益が今期(2023年3月期)8.5%増、続く来期(2024年3月期)に3.2%の増になると予想しています。インフレが業績を押し上げる効果が見込めます。来期の増益を前提に、日経平均株価は2023年末に3万1,000円まで上昇すると予想しています。

東証プライム上場主要841社連結純利益(前期比%)

出所:楽天証券経済研究所が作成

 日本の企業業績の先行きを考える上で重要なのは、コアコア・インフレ率です。コアコア・インフレ率とは、生鮮食品およびエネルギーを除くCPIの前年比上昇率のことです。日本の企業業績を押し上げる「良いインフレ」と言えます。

 コアコア・インフレは、エネルギー価格の上昇要因を除いて計算しているところが重要です。エネルギー価格の上昇は多くの日本企業にとってコストアップ要因です。つまりエネルギー価格上昇がもたらすインフレは、企業業績にマイナス影響をもたらす「悪いインフレ」です。

 一方、コアコア・インフレは企業収益を直接押し上げる「良いインフレ」です。昨年前半、エネルギー価格上昇主導で総合インフレ率が2%を超えた時点ではまだ、悪いインフレが目立ち、良いインフレは影を潜めていました。

 ところが昨年後半になって、やっと日本にも物価上昇の波がやってきました。日本も普通に値上げができる国になってきました。これは、長い年月にわたり、物価下落に苦しんできた日本企業にとって、干天の慈雨です。

 念のため、ここで言う「良いインフレ」「悪いインフレ」は全て、企業業績・株価にとっての議論です。一方、どんなインフレも国民生活にはマイナスなので全てのインフレを「悪いインフレ」という論調がありますが、企業業績を計算する上では、コアコアの上昇は大きなプラス材料です。

日本のインフレはいつまで?

 日本銀行の見通しによると、日本のインフレ率が4%まで高まっているのは一時的で、2023年度後半にはまた2%以下に低下します。その通りとなれば、国民生活にとっては良いことですが、企業業績にとってはマイナスです。

 日本のインフレ率が2023年度後半もこのまま3%前後で高止まりするか、あるいは、日銀の見立て通り2%以下に下がってしまうのか、注意して見ていく必要があります。

 注目されるのは、総務省が2月24日午前8時30分に公表する予定の、1月のCPIです。ここで、日本のインフレ率の高止まりが続くのか、あるいは早くもピークアウトするのかが重要です。インフレのピークアウトが強まると、国民生活にはプラスですが、企業業績・株価にはマイナスとなります。

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