しぶとい米景気、クラッシュを回避して持ち直した例は多い

 米景気がクラッシュするか持ち直すか、迷ったことは過去に何度もあります。さんざん迷い、市場の見方が何度も変わった末、クラッシュした2008年のリーマンショックのような例もあります。

 一方、景気後退の不安がかなり高まったものの、クラッシュすることなく持ち直した事例もたくさんあります。今日は、しぶとく持ち直した事例を説明します。

【1】米利上げが続く中、景気後退を回避して持ち直した2004~2005年

 今と同じように、景気後退のリスクが高まったと判断されたのが2004年です。FRBは2004年4月から利上げを開始し、金融引き締めを続けました。

 それと同時に、米国や日本の景気に停滞感が強まりました。今と同じように、半導体ブームにピークアウト感が強まり、製造業の景況が低下しました。

 2004年4月以降、世界的に株価が調整に入ると、日本のメディアには、「米国バブル崩壊・中国バブル崩壊・デジタルバブル崩壊」などと世界不況を予測する見出しが増えました。

<日経平均とNYダウの週次推移比較:2002年末~2006年末>

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成、2002年末を100として指数化

 ところが、米国は景気後退を回避して持ち直しました。日本の景気も2004年後半には、一時的に後退色が強まりましたが、米景気や中国景気の拡大が続いた恩恵で、2005年には持ち直しました。

 日本の景気判断を担当している総務省は、2004年を「景気踊り場」と呼び、2005年には「踊り場脱出宣言」を出しました。景気後退をぎりぎり回避したことを、そのように表現しました。

【2】景気後退をぎりぎり回避した2016年

 同じように米景気が後退を回避してぎりぎり持ち直したのが、2016年です。2016年前半、世界各国の景気が同時に悪化し、2004年よりも厳しい世界景気悪化局面となりました。日本の景気も落ち込みました。

 それでも日本も世界も、景気後退に陥ることなく持ち直しました。

<日経平均とNYダウの週次推移比較:2013年末~2017年末>

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成、2013年末を100として指数化

 2015年末から、中国景気の悪化が顕著となったため、2015年末から2016年初の世界景気悪化を「チャイナショック」と呼ぶこともあります。

 2015年に原油が急落、それにつれて資源価格が軒並み大きく下落したため、2016年にはブラジル・ロシアなど資源国の景気が急激に冷え込みました。

 米景気も、米国シェールオイル業界の業績が急激に悪化したことを受けて、2016年1-3月には落ち込みました。日本や欧州、アジアまで含めて、世界全体の景気が冷え込みました。

 2016年6月には、英国の国民投票でブレグジット(EUからの離脱)が可決され、世界的に株が一段安となりました。「ブレグジットが可決されるとリーマンショック級の世界不況になる」と言っていたエコノミストもいたため、ブレグジット可決で不安が強まりました。

 ところが、不安の極みにあった2016年6月のブレグジットショック直後から、世界的に株は急反発を始めました。

 2016年後半には、米国景気は急速に持ち直しました。米景気回復にともない、世界中の景気が持ち直し、景気後退は回避されました。

 2016年11月には米大統領選挙で、共和党のトランプ元大統領が当選しました。トランプ大統領は当選と同時に、米景気が急速に改善したので、幸先のよいスタートを切りました。