10月に月替わりした先週の日経平均株価は前週比1,178円高と、9月最終週の下げをほぼ帳消しにするほど激しくリバウンド上昇しました。しかし、7日(金)夜の良好すぎる米国雇用統計を受け、米国株は急落。

※米国雇用統計に関して、詳しくはこちら:1分でわかる!雇用統計と株価の関係

 日本市場が祝日の10日(月)も続落しました。

 今週11日(火)から14日(金)の日本株は、再び乱高下の展開が濃厚です。

先週:悪い製造業指数で上昇、好調な雇用統計で急落の皮肉!

 先週の株式市場は悪材料に好反応して大きくリバウンド上昇。逆に好材料をネガティブに受け止めて下落する展開が際立ちました。

 株価が好反応を示したのは3日(月)、年率10%のインフレに悩む英国のリズ・トラス新政権が減税案を撤回したこと、米サプライマネジメント協会(ISM)の製造業景気指数が2年4カ月ぶりの低水準に落ち込んだことなど。

 5日(水)にOPEC(石油輸出国機構)が、世界経済減速を理由に11月から原油の大幅減産を決定し、資源株が反転上昇したことも追い風でした。

 ISM指数でもわかるように、現在の株式市場は、景気悪化を示す経済指標が出ると逆に株価が上昇する、皮肉な状況になっています。

 その理由は、景気が鈍化すれば、米国の中央銀行にあたるFRB(米連邦準備制度理事会)の強硬な利上げ路線が少しは緩和されるだろう、という淡い期待感から。

 しかし、その期待感を打ち砕いたのが7日(金)発表の米国雇用統計でした。

 9月の非農業部門雇用者数は前月比26.3万人増と予想を上回り、インフレ圧力になる平均時給も前月比0.3%増と高止まりしたままでした。

 この好結果を受けて、株式市場では、11月2日(水)終了のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、再び0.75%の大幅利上げが行われるだろうという失望感が台頭。

 多くの機関投資家が運用指針にするS&P500種指数は、前日比2.8%安と急落。

 週明け10日(月)もナスダック総合指数が 2年ぶりの安値を割り込むなど続落しました。

 日本では、3日(月)に日本銀行が企業の景況感を調査した日銀短観を発表。

 原材料高で大企業製造業の景況感が悪化する一方、大企業非製造業の景況感は2期連続上昇。

 11日(火)からは、外国人の入国制限撤廃や「全国旅行割」も始まり、年末に向けて日本の内需は引き続きが盛り上がりそうです。

 世界的な株安の中、日本株の下落率が比較的低い理由といえるでしょう。

 先週の日本株は、フリマアプリのメルカリ(4385)が前週比19.5%高するなど、成長株や半導体関連株、石油株や海運株がリバウンド。

 しかし、8日(土)に米国が、軍事転用可能な半導体の中国向け輸出規制強化を打ち出し、10日(月)の香港や米国市場で半導体株が急落。日本株にも打撃となりそうです。

今週:議事録、米銀決算など材料満載!CPIは高止まり濃厚!? 

 今週は、ロシア・ウクライナ情勢が緊迫する中、重要指標発表が相次ぐので最大限の注意が必要です。

 12日(水)には米国の9月卸売物価指数(PPI)が発表。

※PPIに関して、詳しくはこちら:1分でわかる!インフレと株価の関係

 また、9月21日(水)に0.75%の大幅利上げを決めたFOMCの議事録も公開されます。

 強硬な利上げ継続が規定路線なので、議事録内で利上げ打ち止めの条件や時期などが少しでも議論されていたら、株価がポジティブに反応する可能性もあります。

 13日(木)には、いよいよ米国の9月消費者物価指数(CPI)が発表。

※CPIに関して、詳しくはこちら:1分でわかる!インフレと株価の関係

 前回8月CPIは前年同月比8.3%の上昇と予想を上回り、世界的な株安の引き金となりました。

 9月の予想値は前年同月比8.1%、前月比0.2%の上昇。

 中古車価格や住居費が上昇しているため、変動の激しい食品やエネルギーを除くコア指数が高止まりそうです。

 コア指数が8月の前年同月比6.3%の伸びを下回らないようだと、再びCPIショックで株価急落もありえます。

 家賃の上昇などはそんなに簡単に止まることはないため、警戒感が広がります。

 14日(金)には米国小売売上高も発表。

 週後半には米国企業の2022年7-9月期決算も本格化します。

 13日(木)にはデルタ航空(DAL)ドミノ・ピザ(DPZ)、14日(金)には、今週CEOのジェイミー・ダイモン氏が「S&P500はさらに20%下落する危険性もある」と発言したJPモルガン・チェース(JPM)シティグループ(C)など大手金融機関が決算発表を行います。

 通常、利上げ局面では貸出金利の上昇による収益増で、金融株は上昇しそうなもの。

 しかし、今年に入って米国の銀行株は、金利上昇による貸し倒れ増加懸念などから下降トレンドが続いています。

 現状の物価高と強硬な利上げに続いて、米国金融機関の業績が悪化すると、金融危機に対する不安感が台頭し、株価が一段安しかねないので注意が必要です。

 先週の10月入り直後のリバウンド上昇を見ると、毎年恒例の年末高に対する投資家の期待感が高まっているのは確かです。

 ただ、今週の株価がどちらに振れるかは、13日(木)発表の米国9月CPI次第でしょう。