JR東海への投資に慎重な理由

 JR4社とも、中長期的な観光業の復興や新幹線ビジネスの成長を見据えるならば、今から投資して長期保有するのも悪くないと思います。JR4社の中で、JR東日本の長期的な投資価値が一番高いと判断しています。

 JR西日本やJR九州も、中長期的な日本の観光業の復活を考えるならば、投資していく価値はあると思います。

 注意が必要なのは、JR東海です。事業に占める新幹線の比率が高いので、本来ならば、JR4社の中で一番投資価値が高くなるはずでした。ところが私は今、JR東海への投資には慎重になるべきと考えています。それは、リニア中央新幹線の建設を進めていることがリスクとして意識されるようになってきたからです。

【1】工事に予想以上の時間がかかる可能性が出てきたこと

 大井川水資源への影響を巡る議論から静岡県で工事差し止め請求が出ています。現在、有識者会議報告などに基づいて解決策を協議中です。最終的に何らかの解決策は見つかると予想されますが、それでも工事の遅れなどでJR東海には想定外のコスト負担が発生すると考えられます。

【2】東海道新幹線とリニア中央新幹線に競合リスクがあること

 リニア中央新幹線は、品川~名古屋間が2027年、大阪までは2045年の開業を予定しています。大阪まで開業すれば、東京~大阪の航空需要を一部代替していくことが期待されます。

 ただし、東京~名古屋だけでは航空需要の代替はあまり期待できません。名古屋までしか開業していない2027年~2045年の間は、リニア中央新幹線と東海道新幹線が顧客を食い合うリスクがあると考えられます。