金利の変動は株式の現在価値にどのような影響を与えるのか?

 金利の変動が企業のバリュエーションにどのような影響を及ぼすのか最後に確認しておこう。

 株式のPV(現在価値)はおおよそ次の公式で求められる。

「PV=C/(R-G)」

C:企業が年間にどのくらいのキャッシュを生み出すのか、期待キャッシュフロー
R:企業が将来その金額のキャッシュを生み出し損なうリスクはどれだけあるか、ディスカウントレート
G:キャッシュが年々どの程度のペースで成長するのか、キャッシュフロー成長率

 年間100ドルの収益を生み出す企業があるとする。利益は毎年3%ずつ増えていく。この時、長期金利の利回りが3%、株式のリスクプレミアムが5%とすると、ディスカウントレートは8%となる。これを公式に当てはめてみると、この企業の現在価値は2,000ドルとなる。

100ドル/(0.08-0.03)=2,000ドル

 では、長期金利が1%に低下した場合はどうなるのか。株式のリスクプレミアム5%と合わせた6%がディスカウントレートとなる。(利益が毎年3%ずつ増えていくのは同じとする)

100ドル/(0.06-0.03)=3,333ドル

 利回りが3%の時の現在価値(2,000ドル)に対して、利回りが1%の時は、現在価値(3,333ドル)が67%も高くなる。

 収益が伸びていない会社の場合も同様だ。

 長期金利が3%の場合、1株あたり100ドルの利益を生み出す企業の現在価値は以下の計算式より1,250ドルとなる。

100ドル/(0.08-0.0)=1,250ドル

 これに対し、長期金利が1%の場合、現在価値は1,667ドルとなり、利回りが3%のときよりも33%も高くなる。

100ドル/(0.06-0.0)=1,667ドル

 つまり、株式のリスクプレミアムとキャッシュフロー成長率が一定だとすれば、長期金利が低下することによって現在価値は高まる。割高と思われているハイテクセクターの株価が正当化されていたのは低金利があったからこそである。しかし、世界的にインフレ懸念が高まる中、日本を除く世界の中央銀行のほとんどがこれまでの緩和的な政策からの転換を模索している。

 これからのインフレの期間にあっては個別、あるいはセクターの選別がより重要になるだろう。

 今回の調整局面においてもし新たにポジションを持つのであれば、インフレ環境下で価格決定力を持つなどの恩恵を受け、さらにバランスシートが健全で、フリーキャッシュフローの成長能力があるファンダメンタルズのしっかりとした企業を、割安水準になった時に拾っておくことが重要になろう。

「今後の先行きは全くわからないし、結構過激に変わる可能性があるので私の助言は極端に投資を分散させることだ。こんなことは今まで勧めた事は無い。ミューチュアルファンドに基づいて言えばパーマネントポートフォリオは10年前に大変に人気があった。昔は大変に成功した。その内容は25%を現金、25%をゴールド、25%を高品質の債券、そして25%の株式だが、とても良い資産分散だと思う。インフレが来れば株式もそんなに悪く無いはずだ。今の米国の財政赤字とGDP(国内総生産)の状況で、GDPに対する赤字が増えるとデフレが来るかもしれない。その場合は高品質の債券と現金が資産を守ることに貢献する。25%の現金、25%のゴールドは多すぎる感じを持つだろうが、今の経済状況では良い手法だろう」

(ジェフリー・ガンドラック)