インフレの環境下で資産を守るためにはどうすれば良いのか?

 世界最大のヘッジファンドであるブリッジウォーター・アソシエイツを率いるレイ・ダリオがインフレの急騰に対して警鐘を鳴らしている。ヤフーファイナンスのインタビューにおいて、インフレについてどれほど心配しているかを尋ねられ、「非常に心配している。予算化され、生み出さなければならない金額とクレジットが大幅に増加しているからだ」と述べている。

 彼はまた、次のようにも述べた。「投資家の視点や個人の視点から見ると、特にそれ以上の生産性を上げなければ、お金と信用を生み出すだけでは生活水準を上げることはできないということを忘れてはならない」と。

 レイ・ダリオはLinkedInに「On Inflation and Wealth(インフレと富について)」というタイトルのブログを投稿し、インフレが米国人の富を侵食していると指摘した。

 インフレが猛威を振るっており、現在、インフレがあなたの財産をむしばんでいるということを示した。それは当然のことだ。現時点では、1)政府が大量のお金を印刷し、2)人々が大量のお金を手に入れ、3)それが大量の買いを生み、さらに大量のインフレを引き起こしている。

 一部の人々は、自分の購買力がどのように損なわれているかを見ずに、自分の資産が値上がりしているので、自分がより豊かになっていると勘違いしている。最も被害を受けているのは、現金でお金を持っている人たちだ。

 では、インフレ局面で資産を守るにはどうしたら良いのか。インフレを予測しコントロールすることはできないため、投資家は自分でコントロールできるいくつかのルールに沿った投資をすることが必要になる。

 一つ目は、インフレ環境においてコスト上昇を転嫁できる企業と、物価上昇時に利益を得る企業を見極めることが必要となる。そうした企業は多くの場合、強力なブランド、独占的な価格決定力、強いマージンを備えている。

 市場がインフレへ動き出した時に、恩恵を受けると期待されるセクターは、銀行を含む金融セクター、エネルギーセクター、資本財などが挙げられる。銀行を含む金融セクターは価格決定力が強く、インフレになると連動して価格を上げることができる。

 エネルギーや資本財(工業製品)などの循環産業も、価格が消費者物価指数に連動するため、アウトパフォームする傾向がある。

 二つ目は、ファンダメンタルズのしっかりした企業に投資をすることである。インフレ環境は実質リターンに影響を与える。これに対抗するためには、パフォーマンスの原動力となる強いファンダメンタルズを持った企業を探すことである。

 三つ目は長期投資だ。過去148年間のS&P500種指数のデータによると、米国の大型株で損をする確率は時間の経過とともに大幅に減少している。投資1カ月では39%の確率で損をするが、3年後には22%程度にまで低下し、20年を経過すると0.1%にまで落ち込む。

米国の大型株に投資した場合のリスクの変化

出所:石原順