偶然ではなく、アドレナリン注入で実現した米国の成長

 先月27日に発表された米国の2021年10-12月期のGDPの速報値は、年率換算で前期比6.9%増と市場予想(同5.5%増)を上まわり、昨年7-9月期の2.3%増(確定値)から成長が加速した。GDPの7割を占める個人消費が前期比3.3%増と勢いを増したとしている。2021年の成長率は前年比5.7%増と、1984年以来、37年ぶりの高さとなった。

 このGDPを受けてバイデン大統領が次のようにツイートした。

バイデンのツイート

出所:Twitter

「これは偶然に起こったのではない。われわれが行った政策により、昨年はこの40年で最速の経済成長を達成した」

 バイデンは誇るように数字を強調しているが、2021年について「約40年ぶりの経済成長」と語るのは誤解を招きかねない。大規模な落ち込みからの回復は「成長」ではない。米国のGDPは2020年にマイナス3.5%となった。2021年に5.7%増となったとしても差引は2.2%、これは反動に過ぎない。

 また、長引く供給不足から企業は昨年、堅調な需要に在庫で対応してきた。企業は在庫の積み増しを再開し始めている。第4四半期の実質GDPの6.9%増のうち、在庫の積み増しによる寄与が4.9ポイントだったことを考慮すると、これは特殊要因であり、2022年以降に剥落することが考えられる。

 この成長を前述の最大の赤字という文脈で捉えると、バイデンのツイートが誇示しているのは、負債と金融緩和によるアドレナリンを最大限に経済に注入したということであろう。

 バイデン政権の中央計画経済的な社会主義政策の経済では、経済格差、金融不安、必需品の価格上昇、インフラの崩壊などによって、経済と社会が空洞化している間、米国のGDPは急上昇するのである。