オミクロン株の影響は見極めに時間が必要

 今週の株式市場は「月またぎ」でいよいよ12月相場に突入します。例年であれば、米クリスマス商戦の初動や、月初恒例の米雇用統計などをにらみながら株価の方向感を展望していくことになります。

 一方今年は冒頭でも触れたように、国内外の金融市場がリスクオフムードを強める中、そのかく乱要因となった新型コロナウイルスの変異株(オミクロン株)の動向に一喜一憂する格好で12月相場を迎えることになります。

 もっとも、オミクロン株に対する市場の反応については、もともと欧州を中心にコロナ感染が拡大していたタイミングだったことや、変異の箇所がこれまで以上に多いという特徴に対する警戒もあって、市場が敏感に不安を先取りした面もありそうです。

 となれば、「不安の行き過ぎ」による買い戻し期待も出てきそうですが、オミクロン株の感染力や症状の重さ、既存ワクチンの有効性などまだ判明していないことが多いのも事実です。仮に、重症化リスクが低い、もしくは既存のワクチンが有効なのであれば、相場が早期に落ち着くと思われます。

 また、既存のワクチンが有効でなくても、現行の主流のワクチンのタイプ(mRNAワクチン)は、比較的容易に新型の変異株に修正対応が可能とされています。ワクチン製造を手掛けている米モデルナ社のCEOは、「60日以内に対応したワクチン発売、数カ月以内に量産体制が可能」と述べています。

 その場合、修正ワクチンの開発・接種のスピードと、感染拡大のスピードや経済活動などへの影響との時間的な勝負となります。すでに各国でのオミクロン株の感染症例が増え始めており、想定以上に感染が拡大してしまうと、リスクオフムードが強まることになるため注意が必要です。

 したがって、オミクロン株については、「極度に慌てたり、不安になる必要はないが、見極めに時間が必要」ということになります。

 また、オミクロン株の材料を除いたとしても、今週は、備蓄の放出が最近話題となったように、原油価格が注目される中で12月2日にOPECプラス会合が予定されています。

 さらに国内では法人企業統計(7-9月期)や10月鉱工業生産、米国では11月ISM景気指数、中国では11月製造業PMIといった具合に、経済指標の発表も相次ぐため、景況感とインフレ警戒がせめぎ合うスケジュールとなっていました。

 さらに、来週末にはメジャーSQ(特別清算指数)が控えていることを踏まえると、しばらくは、今後報じられる事実をにらみつつ、需給の整理を巻き込みながら、株価の「落ち着きどころ」を探る展開となりそうです。

信用買い残高は高水準で推移

■(図3)信用買い残高と日経平均(週足)の動き

出所:MARKETSPEEDⅡおよび取引所公表データを元に筆者作成

 また、上の図3は信用買い残高と日経平均(週足)の推移を表したものです。

 足元の信用買い残高は高水準で推移していることが分かります。年初来安値をつけた8月下旬から年初来高値を更新した9月中旬にかけて残高が減少傾向にあったのですが、以降は残高が再び増加しています。

 となると、2万8,000~2万9,000円台の株価水準での買い残が増えていると考えられ、仮に株価が反発したとしても、戻り待ち売りが出やすく、株価がさらに下落していく場合には、投げ売りが出て、下落を加速させてしまう展開も想定することができます。