日経平均は一段安、上方向への意欲に変化?

 祝日を挟んで4営業日だった先週の国内株市場は、週末26日(金)の日経平均株価が2万8,751円で取引を終えました。

 前週末終値(2万9,745円)からの下げ幅は994円と、かなり大きかったわけですが、25日(木)の取引終了時点では250円安程度にとどまっていたため、26日(金)の急落が響いた格好です。

 週末に見せたこの株価急落は、南アフリカで新たに検出された、新型コロナウイルスの変異株がきっかけです。「オミクロン株」と名付けられた変異株は、国内株市場だけでなく、アジアや欧米など、世界の株式市場を駆け巡って株安をもたらしました。

 今週は足元のこうした株価急落がはたして「買い」の好機なのかの見極めが焦点になりそうですが、まずは、いつもの通り、先週の状況から確認していきます。

■(図1)日経平均(日足)の動き(2021年11月26日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 あらためて先週の日経平均の値動きを振り返ると、祝日を挟んで2万9,500円を意識した弱含みの推移が続いた後、週末に一段安となる展開でした。

 とりわけ、週末の26日(金)の下落によって、75日・200日を下抜けただけでなく、チャートの形状を見ても、10月6日を起点とする下値ラインのほか、直近高値の2つを起点とする、ダブルトップのネックラインも下回っているようにも見えます。

 ここ何回かのレポートでは、「重たいながらも、上方向への意欲は維持している」と述べてきましたが、先週の値動きによって、これまでの見方を修正する必要が出てきました。

TOPIXは上昇ウエッジを下放れ、下方向の意識強まる

 続いてTOPIX(東証株価指数)についても見ていきます。

■(図2)TOPIX(日足)の動き(2021年11月26日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週のTOPIXも日経平均と同じように、週末の一段安が印象的となっています。

 チャートの形状では、TOPIXが年初来高値を付けた9月14日を起点とした上値ラインや、前回のレポートで紹介した「上昇ウエッジ」を下放れており、下方向への意識の強まりが感じられます。

 株価と移動平均線との絡みでは、75日移動平均線を下抜けたものの、200日移動平均線まではまだ少し距離を残している格好です。しかし、26日(金)時点での200日移動平均線は1,962pなのですが、その後の先物取引の終値が1,924pとなっていて、200日移動平均線や、10月6日の安値(1,927p)も下回っています。

 したがって、TOPIXがこれらの株価水準で下げ止まれるかが週初のポイントになりそうです。また、日経平均の先物取引についても、終値が大取で2万7,850円、シカゴCMEで2万8,025円と、一段安となっているため、こちらも下値を探る動きから反発のきっかけをつかめるかが注目されることになります。

オミクロン株の影響は見極めに時間が必要

 今週の株式市場は「月またぎ」でいよいよ12月相場に突入します。例年であれば、米クリスマス商戦の初動や、月初恒例の米雇用統計などをにらみながら株価の方向感を展望していくことになります。

 一方今年は冒頭でも触れたように、国内外の金融市場がリスクオフムードを強める中、そのかく乱要因となった新型コロナウイルスの変異株(オミクロン株)の動向に一喜一憂する格好で12月相場を迎えることになります。

 もっとも、オミクロン株に対する市場の反応については、もともと欧州を中心にコロナ感染が拡大していたタイミングだったことや、変異の箇所がこれまで以上に多いという特徴に対する警戒もあって、市場が敏感に不安を先取りした面もありそうです。

 となれば、「不安の行き過ぎ」による買い戻し期待も出てきそうですが、オミクロン株の感染力や症状の重さ、既存ワクチンの有効性などまだ判明していないことが多いのも事実です。仮に、重症化リスクが低い、もしくは既存のワクチンが有効なのであれば、相場が早期に落ち着くと思われます。

 また、既存のワクチンが有効でなくても、現行の主流のワクチンのタイプ(mRNAワクチン)は、比較的容易に新型の変異株に修正対応が可能とされています。ワクチン製造を手掛けている米モデルナ社のCEOは、「60日以内に対応したワクチン発売、数カ月以内に量産体制が可能」と述べています。

 その場合、修正ワクチンの開発・接種のスピードと、感染拡大のスピードや経済活動などへの影響との時間的な勝負となります。すでに各国でのオミクロン株の感染症例が増え始めており、想定以上に感染が拡大してしまうと、リスクオフムードが強まることになるため注意が必要です。

 したがって、オミクロン株については、「極度に慌てたり、不安になる必要はないが、見極めに時間が必要」ということになります。

 また、オミクロン株の材料を除いたとしても、今週は、備蓄の放出が最近話題となったように、原油価格が注目される中で12月2日にOPECプラス会合が予定されています。

 さらに国内では法人企業統計(7-9月期)や10月鉱工業生産、米国では11月ISM景気指数、中国では11月製造業PMIといった具合に、経済指標の発表も相次ぐため、景況感とインフレ警戒がせめぎ合うスケジュールとなっていました。

 さらに、来週末にはメジャーSQ(特別清算指数)が控えていることを踏まえると、しばらくは、今後報じられる事実をにらみつつ、需給の整理を巻き込みながら、株価の「落ち着きどころ」を探る展開となりそうです。

信用買い残高は高水準で推移

■(図3)信用買い残高と日経平均(週足)の動き

出所:MARKETSPEEDⅡおよび取引所公表データを元に筆者作成

 また、上の図3は信用買い残高と日経平均(週足)の推移を表したものです。

 足元の信用買い残高は高水準で推移していることが分かります。年初来安値をつけた8月下旬から年初来高値を更新した9月中旬にかけて残高が減少傾向にあったのですが、以降は残高が再び増加しています。

 となると、2万8,000~2万9,000円台の株価水準での買い残が増えていると考えられ、仮に株価が反発したとしても、戻り待ち売りが出やすく、株価がさらに下落していく場合には、投げ売りが出て、下落を加速させてしまう展開も想定することができます。

押し目買いの注意点

■(図4)日経平均(日足)の動き その2(2021年11月26日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 最後に少し期間が長めの日経平均の日足チャートで再確認していきます。

 先週末26日(金)時点での日経平均は75日移動平均線をやや下抜けたところに位置していますが、チャートを過去にさかのぼると、この75日移動平均線がサポートとして機能した場面と下抜けした場面とで分かれています。

 結局、「どちらに転んでもおかしくはない」ということになりますが、株価が75日移動平均線にタッチしたときの5日移動平均線の位置を見ていくと、下抜けた場面では、株価とほぼ同じタイミングで5日移動平均線が75日移動平均線を下抜けていたことが分かります。

 足元の5日移動平均線は75日移動平均線からまだ距離があるため、チャートの見た目では株価がひとまず反発する可能性が高いと見ることができます。

 ただ、今年の3月下旬~4月下旬のときのように、いったん75日移動平均線がサポートして機能して株価が反発した後に、再び下落し、そのまま75日移動平均線を下抜けて、しばらく上値の抵抗となる展開も想定されるため注意が必要です。

 その場合は、図4に示した下値メドの価格帯(2万6,800~2万7,500円)あたりまでの下落が考えられそうです。

 以上のように、足元の株価急落は確かに押し目買いの好機として考えることはできますが、戻り待ち売りの圧力が強そうなこと、そして、下げが加速する可能性を踏まえると、短期で早めの手じまいに徹するか、何回かに分散して買いを入れるという取引が有効かもしれません。