要望。つみたてNISAに相続税優遇を!

 以下は、現行のつみたてNISAのメリットではないが、つみたてNISAに付け加えることを要望したい制度改正だ。

 日本の現行制度は、遺産の相続に当たって、不動産や生命保険には小さくない相続税の優遇制度があるが、有価証券の相続資産に対しては概して冷たい。このことは、日本の個人が保有する金融資産(高齢者の保有が多い)の中でリスク資産の比率が少ないことの原因の一つだろう。

 例えば、つみたてNISAの運用資産は相続税算定の対象にならないとしたらどうなるだろうか。

 現行の制度でも、年間40万円×20年間の投資残高をつみたてNISAに保有することができる。この資産を相続税の対象外にできるなら、お金に余裕のある高齢者は、つみたてNISAを大いに利用したいと思うだろう。高齢者の投資を維持する上で効果的なインセンティブだ。

 一方、死亡の直前に持っているお金をリスク資産に振り向けるような行為に対しても、相続税に関して優遇措置を取ることは納得性が乏しい(生命保険では、これに近いことが可能なのだが)。大きな額を優遇の対象とするためには、長い期間の積立が必要なつみたてNISAでは小手先の相続税節税対策が不可能である点が好ましい。

 積立投資で長い期間をかけて徐々に増やした資産であれば、相続税の段階で優遇措置を設けていいのではないだろうか。これはぜひ要望したい。

 掛け金拠出の段階で所得控除があるiDeCoとのバランスを取る上でも納得性があるし、何よりも相続人当たり500万円もの控除を受けられる生命保険とのバランス上も適切であるように思われる。筆者は、現在のつみたてNISAを大変良い制度だと思っているが、改善のために以下の三点を要望したい。

  1. 積立可能な資金枠をせめて月5万円の年間60万円に拡大して欲しい
  2. 一定の条件で運用対象商品のスイッチングを認めて欲しい
    *ノーロードの運用対象商品なので、回転売買が金融業者の利益になることはない。一方、20年は大きな投資環境の変化がありうる「長い期間」である。商品の競争による改善を促す意味でも好ましい
  3. つみたてNISAの資産が相続税の対象外になると素晴らしい

 金融庁(と実質的には税制を取り仕切る財務省)にはぜひ実現をお願いしたいところだ。

 最後にもう一度、現行の制度下でも、高齢者がつみたてNISAを利用する理由が十分あることを強調したい。

【コメント】

 比較的新しい記事なので、内容に大きな変更はない。60歳からでも、つみたてNISAは十分「あり!」だろう。人生は十分長いし、20年間の途中で解約・売却するとしても、その間の運用益非課税のメリットは大きい。世間には「高齢=リスク資産運用に不向き」という思い込みを捨てて、たんたんと合理的に考えるべきだ。(2021年11月14日 山崎元)