パウエル議長のハト派発言を好感して米国株は最高値

 政策変更の発表後の、パウエルFRB議長の記者会見がハト派スタンスだったことを好感して、米国株の主要3指数(NYダウ:ダウ工業株30種平均・S&P500種指数・ナスダック総合指数)はそろって史上最高値を更新しました。

 テーパリング決定が発表される直前に、NYダウは一時160ドル安となっていましたが、発表後には上昇に転じ、104ドル高の3万6,157ドルと最高値を更新して引けました。パウエル議長の記者会見でハト派スタンスが強調されたことが好感されました。

「今は利上げをすべき時ではない」「インフレは一時的」と述べたことから、テーパリング完了後に早期に利上げが実施される懸念が緩和されました。

米政策金利(FF金利)、長期金利、NYダウ月次推移:2000年12月~2021年11月(4日)

出所:ブルームバーグより楽天証券経済研究所作成

 FRBは政策変更がサプライズとならないように、政策の方向性を事前に示唆し、市場に織り込ませることを徹底しています。したがって、今回の政策変更もすべて事前の予想通りで、市場に大きな影響はありませんでした。

 市場が注目していたのは、先行きのガイダンスです。テーパリングを完了した後、いつ頃利上げに動くのか注目されています。

 米景気好調が続く中、米国でインフレ懸念が強まっていることから、量的緩和を終えたあと、いずれ利上げが必要になると考えられています。それがいつ頃か、つまりいつ頃ゼロ金利を終了するかが注目点でした。

 前回のFOMCで、2022年に2回利上げを実施する可能性が示唆されていました。来年6月にテーパリングを完了させた後、来年末までに0.25%の利上げ(FF金利の誘導水準の引き上げ)が2回実施される可能性が示唆されていました。

 今回、パウエル議長が記者会見で、利上げ前倒しの観測をけん制する発言を繰り返したことで、その懸念が緩和される形となりました。