FOMC結果発表、テーパリング実施決定、ゼロ金利は維持
3日(日本時間では4日午前3時)、米国の金融政策を決めるFOMC(連邦公開市場委員会)の結果が発表されました。事前予想通り、テーパリング【注】実施が決定されました。11月に開始して、来年6月までに完了する方針です。
【注】テーパリング
量的金融緩和を徐々に縮小していくことを、テーパリングと呼ぶ。現在、米国の金融政策を司るFRB(連邦準備理事会)は、米国債などの金融資産を購入する量的緩和を行っている。
FRBが米国債などを購入し保有資産を増やすと、その対価として支払われるマネーの総量が増加するので、量的緩和効果が発揮される。FRBは毎月米国債を800億ドル、MBS(住宅ローン担保証券)を400億ドル購入しているので、合わせて毎月1,200億ドル、マネー総量を増やしている。
償還も勘案して保有額がそれだけ増加するように購入している。その購入額を、徐々に減らしていくことをテーパリングと呼ぶ。
金融緩和には2つの柱がある。1つは「金利引き下げ」、もう1つが、流通するマネーの総量を増やす「量的金融緩和」である。FRBは、政策金利をゼロに誘導する「ゼロ金利」を実施しているが、それだけでは金融緩和の効果は限られる。
さらに緩和効果を高めるために量的緩和を実施している。インフレ懸念が高まったことで、今回テーパリングの実施を決定した。テーパリングが完了したら、次は利上げを検討することになる。
政策金利(FF金利の誘導水準)の変更はありませんでした(ゼロ金利維持)。すべてFRBが事前に示唆していた通りなので、サプライズはありませんでした。
現在、FRBは毎月、米国債800億ドルとMBS400億ドル、合わせて1,200億ドル(約13.7兆円)購入しています。11月から購入額を米国債で100億ドル、MBSで50億ドル減らしていきます。
そのペースで購入額の縮小を進めると、8カ月で毎月の購入額はゼロになります。予定通りならば、来年6月でテーパリングが完了することになります。
ただし、インフレ率の変化を見ながら、購入縮小のペースを変えることもあります。インフレが加速すれば購入縮小のペースを速めることもあり得ます。
パウエル議長のハト派発言を好感して米国株は最高値
政策変更の発表後の、パウエルFRB議長の記者会見がハト派スタンスだったことを好感して、米国株の主要3指数(NYダウ:ダウ工業株30種平均・S&P500種指数・ナスダック総合指数)はそろって史上最高値を更新しました。
テーパリング決定が発表される直前に、NYダウは一時160ドル安となっていましたが、発表後には上昇に転じ、104ドル高の3万6,157ドルと最高値を更新して引けました。パウエル議長の記者会見でハト派スタンスが強調されたことが好感されました。
「今は利上げをすべき時ではない」「インフレは一時的」と述べたことから、テーパリング完了後に早期に利上げが実施される懸念が緩和されました。
米政策金利(FF金利)、長期金利、NYダウ月次推移:2000年12月~2021年11月(4日)
FRBは政策変更がサプライズとならないように、政策の方向性を事前に示唆し、市場に織り込ませることを徹底しています。したがって、今回の政策変更もすべて事前の予想通りで、市場に大きな影響はありませんでした。
市場が注目していたのは、先行きのガイダンスです。テーパリングを完了した後、いつ頃利上げに動くのか注目されています。
米景気好調が続く中、米国でインフレ懸念が強まっていることから、量的緩和を終えたあと、いずれ利上げが必要になると考えられています。それがいつ頃か、つまりいつ頃ゼロ金利を終了するかが注目点でした。
前回のFOMCで、2022年に2回利上げを実施する可能性が示唆されていました。来年6月にテーパリングを完了させた後、来年末までに0.25%の利上げ(FF金利の誘導水準の引き上げ)が2回実施される可能性が示唆されていました。
今回、パウエル議長が記者会見で、利上げ前倒しの観測をけん制する発言を繰り返したことで、その懸念が緩和される形となりました。
2大イベント通過で次は業績相場へ
今週、日本株にとって重要イベントが2つありました。10月31日投開票の衆院選と、11月3日の米FOMCです。
衆院選は、自民党が単独で絶対安定多数を確保し株式市場にとってポジティブ・サプライズでした。FOMCでは事前の市場予想通りテーパリングが決定されましたが、利上げ前倒し懸念が高まることはありませんでした。
2大イベントを無事通過したことで、今後は企業業績に注目する「業績相場」色が強まると思います。今まさにピークを迎えている9月決算への注目が高まります。今日、発表予定のトヨタの決算などが重要です。
9月の中間決算では、通期(2022年3月期)の業績予想を上方修正する企業と、下方修正する企業が混在していますが、最終的には上方修正が優勢と予想しています。企業業績の好調を織り込みつつ、日経平均は少しずつ下値を切り上げていく展開になると予想しています。
ただ、中国の不安には注意が必要です。破綻懸念が高まっている中国不動産大手、恒大集団について、中国政府がどのような対応を取るかが注目されています。恒大の処理と、中国景気減速懸念には注意が必要です。
米景気・企業業績は来年も好調と予想していますが、パウエル議長が想定している通り、インフレが低下していくかは、注意して見ていく必要があります。
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