NYダウは好調が続く

 となると、足元の日米の株式市場のギャップの裏には、「日本株が出遅れている」面と、「米国株が楽観的に動いている」面の両方がありそうです。日本株の出遅れについては、徐々に意識が高まってきそうですが、現時点で注意しておきたいのは、米国株の調整の方かもしれません。

 そのため、米国株の状況についても見て行きます。

■(図4)米NYダウ(日足)の動き(2021年11月5日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図4を見ても分かる通り、足元のNYダウ(ダウ工業株30種平均)は「上昇が止まらない」というぐらいに好調が続いています。

 とりわけ、8月16日のこれまでの最高値(3万5,631ドル)を超えてからの勢いはすさまじく、最高値を更新した直後の10月27日に大きな陰線が出現したものの、以降は先週末の11月5日まで7営業日連続で陽線が並ぶ「7陽連」となっています。
最高値更新前も9陽連だったほか、移動平均線も25日と50日移動平均線のゴールデンクロスも出現しています。図4でイチャモンをつけるのであれば、5日(金)のローソク足の上ヒゲが長くなっていることぐらいです。

 もちろん、米株市場もインフレ警戒や供給網の混乱、債務上限問題の期限などの不安が払拭されたわけではなく、急落するリスクはくすぶっています。
しかし足元では新値を更新しているほか、「ゴルディロックス相場(適温相場)」のムードもあり、ある程度の上昇トライの達成感が出るまでは、しばらく強気の見通しが続く可能性があります。

NYダウの売り待ちのテクニカル指標を確認

 となると、米株の変調に敏感になる必要があります。そこで、最後に売り待ちのテクニカル指標についても見て行きます。

■(図5)米NYダウ(日足)のボリンジャーバンドとRCI(2021年11月5日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図5は、上段が米NYダウのボリンジャーバンド、下段がRCI(順位相関指数)と呼ばれるオシレーター系のテクニカル指標です。

 先ほどの図4でも触れたように、足元のNYダウは上昇基調を強めています。図5のボリンジャーバンドでも、「バンド・ウォーク」と呼ばれる状態となっています。

 バンド・ウォークとは、ボリンジャーバンドを構成する5本の線が同じ方向となり、上昇であれば、株価がプラス2σ(シグマ)とプラス1σの範囲を往来しながら、トレンドが継続される状況のことを指します。つまり、足元のNYダウがプラス1σを下抜けた時には注意ということになります。

 また、下段のRCIはトレンドの強さを株価と時間の順位付けをすることで判断する指標です。細かい説明は省きますが、簡単なRCIの見方としては、短い期間の線と長い期間の線のクロスに注目します。

 足元は短期の線(9日)が長期の線(13日)を上抜けるクロスとなっていますが、次は下抜けるクロスが注意すべきポイントです。

 チャートを過去にさかのぼると、RCIの値が高い時に下抜けクロスが出現すると、株価の値動きが鈍化したり、調整する傾向があります。実際にはもう少し詳しく見ていくのですが、とりあえずはクロスだけでも注目しておくと良いかもしれません。

 ちなみに、今週は中国絡みが話題になるかもしれません。政治イベント(6中全会・8日~11日)のほか、物価関連指標の発表(10日)、中国恒大集団の利払い日(8日に8,249万ドル)、一大商戦となる「独身の日(11日)」などが予定されています。

 さらに、テンセント(騰訊控股)や、EV(電気自動車)のニオ(NIO)、ECサイトの拼多多(ビントゥオトゥオ)、SNSの微博(ウェイボー)といった中国企業の決算も控えており、その動向によっては日本株にも影響を与えるかもしれません。

 従って、足元の相場に対して、敢えて慎重になる必要はありませんが、上値トライの流れの乗りながらも、注意すべき点が残されていることと、相場のムードの変化に敏感に反応する備えはしっかりとしておいた方が良さそうです。