日経平均は先週後半に失速も、上昇への意欲が残る

 11月相場入りとなった先週末5日(金)の日経平均終値は2万9,611円となりました。前週末終値(2万8,892円)からの上げ幅は719円と大きく、週足ベースでも2週連続で上昇しています。

 前回のレポートでは、「新たな相場入り」の可能性を指摘し、実際に日経平均の株価水準も切り上げてきたわけですが、その一方で、連日で最高値を更新していた米国株と比べると、その勢いに対して物足りなさも感じられる週となりました。

 そのため、今週も上方向の意識を維持して、さらなる株高へとつなげられるかが焦点になりそうですが、まずはいつもの通り、足元の状況から確認していきます。

■(図1)日経平均(日足)の動き(2021年11月5日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 あらためて先週の日経平均の値動きを振り返ると、週初の1日(月)は、「窓」空けで一段高となり、節目の2万9,000円や9月14日の年初来高値を起点にした上値ラインを突破しただけでなく、その勢いのまま2万9,500円水準まで値を伸ばしてきました。

 祝日明けの4日(木)の取引も、「窓」空けスタートで2万9,880円までを伸ばし、3万円を射程圏内に捉える場面を見せたのですが、その後は上げ幅が縮小する動きとなり、週末5日(金)もいわゆる「寄り付き天井」の格好で値を下げて終了しています。

 ローソク足の並びも3日(水)の祝日をはさんで陽線が並んだ前半と、陰線が並んだ後半に分かれ、上値が重たいムードが感じられくもないのですが、それでも下値については2万9,500円と5日移動平均線がサポートとしてしっかり機能しており、上昇への意欲は残っていると言えます。

エリオット波動も再び上値トライへの期待が強い

 また、相場のリズムで確認しても上方向への意欲の維持が感じられます。

■(図2)日経平均(日足)とエリオット波動(2021年11月5日時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図2はここ数回のレポートでも紹介している、日経平均の値動きを波で捉えたものになります。

 8月20日の年初来安値から9月14日の年初来高値更新までの日経平均は、ピンク色の矢印が示しているように、上昇基調のリズムを描いていましたが、4波が上昇1波の高値を下回ったことで、オレンジ色の矢印が示す下落のリズムへと転じました。

 前回のレポートでは、下落のリズムの波の修正局面(4波)でもみ合う「もちあい」の状況となっていましたが、先週の値動きによってもちあいを上放れし、さらに、下落1波の安値(2万9,573円)を超えたことで、下落リズムを打ち消す格好となりました。

 週末にかけての株価の失速は、下落1波の安値という節目を突破したことによる「リターン・ムーブ」の動きと見ることができます。もちろん、このまま下落が続くことも考えられますが、もちあいを上抜けて、下落リズムを打ち消したことを踏まえると、再び上値をトライする展開への期待の方が強そうです。

3万円達成後の株価目安

 仮に、今週以降の日経平均が上を目指す展開となった場合は、前回のレポートでも紹介した目標値計算が目安となります。

■(図3)日経平均(日足)の目標値計算(2021年11月5日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 前回のレポートでは、オレンジ色の線の目標値計算(N計算値で3万1,134円、E計算値で3万4,636円)を紹介しましたが、今回はもうひとつの目標値計算についても考えてみます。

 具体的には、直近安値の10月6日の2万7,293円から、戻り高値をつけた10月20日の2万9,489円の上昇幅(2,196円)を使った計算になり、上の図3で、ピンク色の線が示しているものがそれに該当します。N計算値で3万668円、E計算値で3万1,685円です。

 そのため、3万円の大台に乗せた後の目標値は、ピンク色のN計算値(3万668円)、年初対高値(3万795円)、オレンジ色のN計算値(3万1,134円)、ピンク色のE計算値(3万1,685円)の順になります。

 図1~図3を見ても分かるように、確かに日本株は上方向への意識を強めてはいますが、連日で最高値を更新している米国株市場の流れにはイマイチ乗り切れていない面があるのは気掛かりです。

 最近の米国株が好調な背景には、(1)米長期金利や資源価格の一服していること、(2)コロナ治療薬と経済再稼働への期待、(3)決算を好感した物色、(4)FOMC(米連邦公開市場委員会)後の米金融政策のハト派姿勢などが挙げられます。
日本株は「世界の景気敏感株」という性格があるため、景気の先行きを好感する動きを織り込むのであれば、もう少し日本株が上昇してもおかしくはなさそうです。ただ、いまのところそのような動きにはなっていません。

NYダウは好調が続く

 となると、足元の日米の株式市場のギャップの裏には、「日本株が出遅れている」面と、「米国株が楽観的に動いている」面の両方がありそうです。日本株の出遅れについては、徐々に意識が高まってきそうですが、現時点で注意しておきたいのは、米国株の調整の方かもしれません。

 そのため、米国株の状況についても見て行きます。

■(図4)米NYダウ(日足)の動き(2021年11月5日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図4を見ても分かる通り、足元のNYダウ(ダウ工業株30種平均)は「上昇が止まらない」というぐらいに好調が続いています。

 とりわけ、8月16日のこれまでの最高値(3万5,631ドル)を超えてからの勢いはすさまじく、最高値を更新した直後の10月27日に大きな陰線が出現したものの、以降は先週末の11月5日まで7営業日連続で陽線が並ぶ「7陽連」となっています。
最高値更新前も9陽連だったほか、移動平均線も25日と50日移動平均線のゴールデンクロスも出現しています。図4でイチャモンをつけるのであれば、5日(金)のローソク足の上ヒゲが長くなっていることぐらいです。

 もちろん、米株市場もインフレ警戒や供給網の混乱、債務上限問題の期限などの不安が払拭されたわけではなく、急落するリスクはくすぶっています。
しかし足元では新値を更新しているほか、「ゴルディロックス相場(適温相場)」のムードもあり、ある程度の上昇トライの達成感が出るまでは、しばらく強気の見通しが続く可能性があります。

NYダウの売り待ちのテクニカル指標を確認

 となると、米株の変調に敏感になる必要があります。そこで、最後に売り待ちのテクニカル指標についても見て行きます。

■(図5)米NYダウ(日足)のボリンジャーバンドとRCI(2021年11月5日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図5は、上段が米NYダウのボリンジャーバンド、下段がRCI(順位相関指数)と呼ばれるオシレーター系のテクニカル指標です。

 先ほどの図4でも触れたように、足元のNYダウは上昇基調を強めています。図5のボリンジャーバンドでも、「バンド・ウォーク」と呼ばれる状態となっています。

 バンド・ウォークとは、ボリンジャーバンドを構成する5本の線が同じ方向となり、上昇であれば、株価がプラス2σ(シグマ)とプラス1σの範囲を往来しながら、トレンドが継続される状況のことを指します。つまり、足元のNYダウがプラス1σを下抜けた時には注意ということになります。

 また、下段のRCIはトレンドの強さを株価と時間の順位付けをすることで判断する指標です。細かい説明は省きますが、簡単なRCIの見方としては、短い期間の線と長い期間の線のクロスに注目します。

 足元は短期の線(9日)が長期の線(13日)を上抜けるクロスとなっていますが、次は下抜けるクロスが注意すべきポイントです。

 チャートを過去にさかのぼると、RCIの値が高い時に下抜けクロスが出現すると、株価の値動きが鈍化したり、調整する傾向があります。実際にはもう少し詳しく見ていくのですが、とりあえずはクロスだけでも注目しておくと良いかもしれません。

 ちなみに、今週は中国絡みが話題になるかもしれません。政治イベント(6中全会・8日~11日)のほか、物価関連指標の発表(10日)、中国恒大集団の利払い日(8日に8,249万ドル)、一大商戦となる「独身の日(11日)」などが予定されています。

 さらに、テンセント(騰訊控股)や、EV(電気自動車)のニオ(NIO)、ECサイトの拼多多(ビントゥオトゥオ)、SNSの微博(ウェイボー)といった中国企業の決算も控えており、その動向によっては日本株にも影響を与えるかもしれません。

 従って、足元の相場に対して、敢えて慎重になる必要はありませんが、上値トライの流れの乗りながらも、注意すべき点が残されていることと、相場のムードの変化に敏感に反応する備えはしっかりとしておいた方が良さそうです。