米国の上場企業のほとんどを網羅する「VTI」がオススメ

──では、数あるETFのなかのオススメについて教えていただけますか。やはり「VTI」ということになるんでしょうか。

 そうですね、イチ押しはやっぱり「VTI」ですね。ちなみにバンガードには「バンガード・S&P500ETF(VOO)」という商品もあります。「VTI」が米国の上場企業のほとんどを網羅しているのに対して、「VOO」は米国の主要銘柄500によって構成されます。いわば実績のある銘柄の集合体ですからより安定性が高い商品と考えています。

──でも、たぱぞうさんは「VTI」推しなんですよね。

 僕には新興企業や中堅企業が含まれる「VTI」のほうが魅力的に思えるんです。なぜなら、米国には創業してすぐ驚異的な成長を遂げたり、何かをキッカケに大化けする企業が山ほどあります。だから、新興企業や中堅企業を含んだほうが面白いかなと。ただし、そういう企業は大手企業や有名企業に比べると倒産のリスクが高いわけですから、トータルに考えるとどちらが高パフォーマンスを期待できるかは難しいところです。そのあたりは好みといえるかもしれません。

──世界中の上場銘柄の集合体である「VT」はどうですか。

 実は日本の投資家の間では「VTI」よりむしろ「VT」のほうが人気なんですね。専門家でも「VT」を推奨する人が多い。これはいわば世界経済を丸ごと買うような商品ですから、「世界経済は長期的には発展していくものだ」という前提に立てば、非常に説得力のある商品といえます。それに米国企業に絞るよりも、全世界に分散投資したほうがリスクが少ないという見方も当然あります。僕自身は、どちらかといえば「VTI」派ですが、「VT」もオススメの一つであることには変わりありません。

──素人目線でいわせてもらうと、新興国モノなんて面白いと思うんですが。経済成長が著しい国の銘柄を集めた商品であれば、高パフォーマンスを期待できるのでは?

 バンガードには、ブラジルやロシア、インド、中国、南アフリカなどを投資対象とする「バンガード・FTSE・エマージング・マーケッツETF(VWO)」という商品があります。これもおっしゃる通り、人気商品の一つです。ただ、新興国ETFにはいくつか難しい問題があるんです。一つは経済成長と株価は必ずしもリンクしないということ。経済成長は著しいけど、株価は上がらないということも往々にしてあるんです。

 それと、新興国の場合、株式市場に関する法整備が遅れていることがあり、ある程度のリスクを伴います。ただし、ETFなら、例えばブラジルが経済危機にひんしても、ほかのロシアやインド、中国などが好調ならプラマイゼロ以上を期待できますから、どこか1カ国に集中投資するよりははるかに安全といえるでしょう。

──ETFの魅力はよく分かりました。で、一つ確認ですが、米国ETFは米ドルで買うんですよね。

 そうですね。証券口座を開いたら円を米ドルに両替して購入します。とはいえ、多少手間がかかるくらいで、難しいことは何もないので、トライしてみるとよいかと。

──日本円では買えないのですか。

 今は東証でも外国株ETFを販売しています。まだ種類は限られますが、当然円で買えますから、どんな商品があるのか調べてみるといいかもしれません。それと今年1月に「つみたてNISA」が始まったのはご存じかと思いますが、これによって米国ETFは一気に身近なものになりました。例えば楽天投信投資顧問では「楽天バンガード全米株式インデックスファンド」という商品を発売したのですが、これは前述した「VTI」をパッケージ化した商品であり、大いにオススメできます。

──では、それについては後編で詳しくお聞きします。

読者へのメッセージ

水になれ と書くたぱぞうさん

 水は、器が丸ければ丸く、四角ならば四角になります。
 相場環境に合わせて、私たちもしなやかに生き抜きたいですね。

後編へ続く

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◎今回の取材先:たぱぞうさん
米国投資を中心に毎日記事を更新している「たぱぞうの米国株投資」。
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