リスク要因としての自然災害とデルタ株

 一方、付報道官は「7月、高気温、暴雨、一部地域で発生した新型コロナウイルスの新たな感染拡大の影響を受けて、国民経済の主要経済指標が低迷した」とも指摘。7月に河南省を襲い、300人以上が亡くなった洪水被害、そして江蘇省南京市を皮切りに、全国各地で再び発生している新型コロナウイルスの感染拡大が、景気減速の直接的要因となったのも事実です。

リスク要因1:自然災害

 地震や洪水を含めた自然災害は、引き続き中国経済にとってのリスク要因だと私は見ています。河南省洪水時には、生産工場の稼働やインフラの建設工事が遅れ、粗鋼やセメントの生産が落ち込みました。サプライチェーンや消費動向に支障をきたし、景気の下振れリスクとなるのは言うまでもありません。

 自然災害について思い出す光景があります。2008年5月、北京夏季五輪を3カ月後に控えたタイミングで四川省を襲った大地震です。

 当時、私は北京にいて、四川大地震関連の公共議論に関与していました。死者数約7万人、行方不明者数約2万人、負傷者数約37万人、家屋倒壊数約22万棟、損壊家屋数約415万棟という巨大な被害。その惨状を今でもよく覚えていますが、これだけ大規模な被害となったのは、地震という「天災」という側面だけではなく、建物やインフラ設備の耐震性に疑問符が付くという意味で「人災」だという意見が多々ありました。

 そんな中、中国リベラル系有力紙、例えば「南方週末」などは、「人災」をにおわせながら取材や報道をしていたため、党・政府当局による処罰を受けました。

 このように、自然災害という緊急事態時には、中国経済や統治機構が抱えるぜい弱性が浮き彫りとなります。中国において、災害が景気に及ぼすリスクを、私がとりわけ懸念するゆえんです。