新型コロナウイルスが下半期の中国経済にとって最大のリスク要因

 国家統計局の付報道官が「世界各地で新型コロナウイルスは引き続き、変異しながら拡大しており、世界経済復興にとっての不確実性も増大している。中国経済の回復も、依然として少なくない課題に直面している。生産を制約する要素は増加しており、構造的問題も比較的突出している」と指摘するように、やはり新型コロナウイルス、特にデルタ株の感染拡大は、下半期の中国経済にとって最大の不安要素の一つと言えるでしょう。海外における感染拡大が、中国と諸外国との間の貿易や取引に悪影響を与えるのも必至です。

 低迷する消費に関しては、「ワクチン接種の拡大や有効な感染拡大防止措置の実行を通じて、消費市場は全体的に安定することが期待できる」(同報道官)とのこと。前出の国家衛生健康委員会の馬主任の紹介によれば、8月14日の時点で、全国各地のワクチン接種回数は18.5億回で、すでに7.7億人(人口の約60%)が2回目の接種を終えていて、また、12~17歳の青少年向けの接種に関しても、現在計画や手続きを推し進めているとのことです。

 既存のワクチンがデルタ株への感染防止にどれだけ有効かなど、いろいろ疑問は残りますが、中国当局としては、ワクチン接種率の拡大と徹底した感染防止対策で難局を乗り切り、経済への悪影響を最小限に食い止めようとしているのでしょう。付報道官は、今年の中国経済成長率は「前高後低」、すなわち、上半期が高く、下半期は低くなるという趨勢(すうせい)を明言しています。昨年の上半期、特に第1四半期が新型コロナの影響で大打撃を受けた経緯を顧みれば当然ですが、2021年1-3月期の経済成長率(GDP:国内総生産)が18.3%増(前年同期比)、1-3月期で7.9%増(同)と推移してきた中で、これが第3四半期、第4四半期にどうつながっていくのか見ものです。

 7月の景気減速も受けて、各国の金融機関は、通年の成長率を下方修正しています。私自身は、それでも8%前後に落ち着くだろうとみていますが、国内外の新型コロナウイルスの感染拡大状況いかんでは、李克強(リー・カーチャン)首相が3月の全人代で披露した「6%以上」という年間目標を何とか達成、という辺りまで低迷する可能性もなきにしもあらず、といえるでしょう。下半期は、上半期以上に、中国経済にとってのリスク要因が顕在化し、マーケットを揺さぶってくると私は見ています。