REITと債券のイールド・スプレッド(利回り差)に注目

 先進国の預貯金や債券の利回りは依然低水準で、分配金利回りが比較的高いREITの堅調を支えています。例えば、J-REITの平均分配利回りが3.41%であるのに対し、国内の長期金利(10年国債利回り)は0.07%で、短期金利(2年国債利回り)は▲0.12%です。特に長期金利とのイールド・スプレッド(利回り差)は3.34%となっています(図表4)。

 低金利環境は「利回り面の魅力」だけでなく、資金調達コスト(財務コスト)が低いことでREIT投資法人の収益性を改善させる効果もあります。低金利環境と商業用不動産市況の改善が続くなら、REITに対する投資ニーズは根強いものとなりそうです。

<図表4:REITの分配金利回りと対債券「イールド・スプレッド」>

(出所) Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2021年6月9日)

 日本ではJ-REITの堅調と分配金利回りの相対的な高さを受け、国内の金融機関がREITを買い始めたとの見方もあります。地方銀行などが、ゼロ金利のJGB(日本国債)の代替投資先としてREITを選好しているとされます。

 また、昨年秋から世界の代表的な株価指数である「FTSEグローバル株式指数」がJ-REITを組み入れ始めたことも需給好転を期待させています。

 ただ、米国でインフレ(物価上昇率の加速)懸念が再浮上し、10年国債利回りなど債券市場金利が急上昇すれば、一時的にせよREITが売られるリスクはあります。

 債券市場が経済正常化とテーパリング(量的緩和縮小)をいったん織り込み、長期金利の安定が続くとのシナリオを前提にすると、オルタナティブ(代替投資先=分散投資先)として引き続きREITが物色される可能性があります。

 世界、米国、日本、豪州のREITに分散投資するETF(上場投資信託)や追加型公募投信は多種類あります。REITの個別銘柄に投資するより、ファンドを活用してREIT市場全体の値動きや定期的な分配金(主に日本では半期決算、海外では四半期決算)を得ていく分散投資が合理的と考えています。

▼著者おすすめのバックナンバー
2021年6月4日:米国株のETF投資戦略:バリュー株相場いつまで?業績はグロース優位!
2021年5月28日:ビットコインが暴落!日本株への影響は?注目は米国半導体株
2021年5月21日:世界株式の調整は続く?リスクはリターンの源泉なり