REITの分配金利回りは株式の配当利回りより高い

 欧米の古くからの諺(ことわざ)に「A bird in the hand is worth two in the bush」(手の中にある一羽の鳥は、茂みの中の2羽の鳥の価値がある)があります。利回り重視の投資ニーズを示す「手の中の鳥理論」(The bird-in-hand-theory)として知られています。

「やぶの中(遠くで)で見え隠れしている2羽の鳥(株式の値上がり益)は不確かなものだが、手の中で(足元で)比較的利回りの高いキャッシュフロー(分配金)を提供してくれる投資商品の方が堅実である」とする投資ニーズを表現しています。

 将来、手に入れられるかどうか確実でないリターンより、確実に手に入れられるリターンの方が良いとの考えは、日本の諺で「明日の百より今日の五十」があります。

 相対的に高い利回りを求める投資家は「イールド・ハンター」と呼ばれますが、各種リスク資産のなかで実物資産(商業用不動産)と定期的収入(分配金)の裏付けがあるREITが選好されている状況と言えるでしょう。

<図表3:REITの分配金利回りは株式の配当利回りより比較的高い>

(出所) Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2021年6月9日)

 図表3は、世界のREIT市場それぞれの平均分配金利回りを、株式市場の平均配当利回りと比較したものです。世界REITの平均分配金利回りが3.1%であるのに対し、世界株式の平均配当利回りは1.7%となっています。米国REITやJ-REITの平均分配金利回りも株式の平均配当利回りを上回っています。

 REITには、税引き前利益の9割以上を分配金として払い出す前提で「法人非課税」(REIT法人に法人税が課されない)の特徴があり、REITの分配金利回りが比較的高い理由とされます。

 総じて、利益成長や値上り益期待の面は株式が優れている一方、安定収入(不動産収入にもとづく定期的な分配金)の面ではREITが優れているとされます。

 米国ではバイデン政権が大型景気対策(歳出総額で約6兆ドル)を打ち出しましたが、その財源として「法人増税」を議会と協議しています。REIT法人は(もともと)法人非課税であり、投資家の注目がREITに向かいやすい環境とも言えます。