6月に注目したい新興株の動き

 6月の新興株市場、「期待半分、不安半分」といったところでしょうか。上にも下にも短期のトレンド自体が消えていますし、そもそも肝心の米ハイパーグロース株が(なんだかんだ)大崩れは回避中ながら何とも言えないあんばい。ひとまず、しっかり現状認識をしつつ「過剰な期待はせず」といったところでしょうか…。

「期待」半分でいえば、マザーズ銘柄とは真逆のアフターコロナ株(JR株や空運株、百貨店株や旅行会社の株など)の上昇がすごすぎること…その反動に期待してみる程度でしょうか。日本でも、先月24日より大規模ワクチン接種センターが開始。メディアも連日取り上げており、話題性も抜群です。

 そもそもが、ワクチン接種の遅れを理由に、先進国の株価指数でパフォーマンス最低だった面もあった日本株…それだけに、ワクチン接種の巻き返しによるリバーサル的な動きが広がっているように見えます。

 短期のモメンタムも付いたことで、相当量の短期勢も参戦。結果、コロナ前の株価どころか、2019年高値すら上回るようなアフターコロナ株(=コロナネガティブ株)が増えました。

 ワクチン接種で先行した米国のように、ワクチンが普及すれば、飲み屋も映画もコンサートも再開するだろう…リベンジ消費需要のポテンシャルが甚大なのは明らかですが、とはいえ、現時点ではほぼ進展していません。

「株価は半年先を織り込む」といいますので、すでにワクチン後の織り込みが進んでいるのでしょうが…とはいえ、「さすがに上げ過ぎ」と思っている市場参加者は多いはず。

 現状は、「ヒヨったら負けのチキンレース」くらいの様相になっており、ワクチン接種の進展をトリガーにした「アフターコロナ株買い/ウィズコロナ株売り」のトレンドが、反転する可能性は十分ありそう。

 東証1部市場でも、海外では“リ・オープニング”と呼ばれているアフターコロナ株が盛り上がる一方で、エムスリーやメドピア、ニトリ、サイバーエージェントなどウィズコロナ株が強烈に下げています。この動きの巻き戻しが起きた場面で、想像以上の逆流が生じるはず。そのときに上がるのはウィズコロナ株、ということはマザーズ銘柄も盛り返す公算は立つわけです。

 一方で、「不安」も半分あります。不安な面といえば、マザーズ市場の売買エネルギーが大きく低下している点。“流動性が命”のマザーズ市場においては致命的。

 これについて想像するなら、(1)恐怖感満載の下げが5月17日の安値まであった→(2)ここでロスカットが多発し、短期的なシコリがほぐれる→(3)後遺症(「また急落きたら嫌だな」など)が残り、様子を見ていたら、意外に(閑散に売りなし風に)上がっていたため順張りの買いも入りにくくなった→(4)安値後に入った投資家の需給はすこぶる良好→(5)とはいえ、長期保有前提のフローが少なく、値動きさえ良ければOKな短期フローの比率増加…数週間、数カ月といった長めのスパンで入る投資家が減るなか、短期勢がモメンタムのついた高い株ばかりにお金が集まる傾向が強まっています。

 また、日経平均に上下の動きが出ていますので、日経平均型のブルベアETFに短期資金が向かいがちなうえ、人気ナンバーワン銘柄のソフトバンクGが異様に安く、“逆張り”の個人マネーもソフトバンクGに流入(しかも塩漬け株になっている)。これでマザーズ市場の売買が薄くなっているなか…容赦なく圧し掛かるのが「IPOラッシュ」です。これが厄介。

 6月はIPOが再開し、月間で23社(うちマザーズ18社)も予定されています。ピークは月後半(22日3社、23日3社、24日4社など…)で、かなりの過密スケジュール。「IPOがマザーズ市場を活性化させる」なる意見もよく聞きますが、それは長期目線の話。

 短期的には、初値買い含めたIPOのセカンダリー参戦に短期マネーが奪われ、既存の上場銘柄の流動性が大きくそがれます。「IPOが多い=(6月の新興株市場にとっては)マイナス」のはず。

 以上を理由に、「期待半分、不安半分」。アフターコロナ株とウィズコロナ株(マザーズ株)で両極端な株価(昨年の真逆)になってきましたので、短期と割り切るなら順張りで前者、長期前提なら逆張りで後者…これが理屈に合っているはずです。

 では、何を目安に動く? でいえば、近年まれに見る人気化で最強モメンタム株と化している“トヨタ株”じゃないでしょうか。トヨタとマザーズって、サイズ的にも性質的にも真逆ですしね。トヨタが天井付けて下げ始めれば、マザーズが反撃…単純ですけど、そんなものじゃないでしょうか。