売買代金ランキング(5銘柄)

1 AI inside(4488・東証マザーズ)

 4月28日に発表された「大口OEMパートナーNTT西日本からの大量ライセンス不更新通知」。解約率の低いビジネスモデルをウリに、高成長のSaaS銘柄として超高バリュエーションが付いていただけに、そのショックは甚大でした。

 発表直前終値3万7,300円に対し、5月7日(下限の制限値幅4倍適用)の全株一致時株価は1万7,000円。昨年11月に付けた上場来高値は9万6,000円とマザーズ最大の値がさ株だった経緯もあるうえ、発表直前の信用買い残は140億円とマザーズ最大。その株のリリース一発での暴落には衝撃が広がりました。

 12日に発表した今期ガイダンスは、大口解約の影響で、売上高は前期比21.5%減の36億900万円、営業利益が同80.8%減の4億5,300万円でした。21日には、保有割合5.5%で大株主だった米キャピタルリサーチが全株売却したことも判明しています。

 決算発表時にNTT東日本など他のOEMパートナーの状況などは明かされず、不透明感は晴れないまま。現状でも予想PER(株価収益率)は200倍を超えていますので、さすがにロングオンリー勢も一旦降りるしかなさそうで…。

2 シンバイオ(4582・ジャスダック)

 今期黒字転換を見込む創薬ベンチャーで、ジャスダック・グロース市場では時価総額でダントツ。エーザイから自社販売に移行した海外事業は、第1四半期から売上高で14億円超を計上。

 その他のカタリストも豊富で、中外製薬の再発・難治性リンパ腫に効果を発揮する治療薬が販売開始となるなか、併用療法で同社の抗悪性腫瘍剤「トレアキシン」の使用が可能になること、同社が独占的開発・製造・販売権を持つ米キメリックス社の抗ウイルス薬への期待などの株価織り込みも進んでいるようです。

 株価が堅調なため需給は良いのですが、注意が必要とすれば信用買い残が多い点。5月末時点でも527万株ありますが、これは発行済み株数の13%以上と高水準。創薬ベンチャーだけに中小型ファンドの関与率が低いと見られ、上昇トレンドが一度崩れると調整が長引きやすい銘柄とも言えます。

3 QDレーザ(6613・東証マザーズ)

 注目された上場後最初の本決算でしたが、内容的にはネガティブでした。13日に発表した今期見通しは、売上高が前期比41%増の12億円、営業損益が5.3億円の赤字(前期は6.5億円の赤字)。

 一部国内大手証券が、営業赤字は1億円未満と事前にレポートで予想していたこともあり、いわゆる“コンセンサス下振れ”に。翌14日は一時10%超の下落率となりました。

 ただ、決算翌日の失望売り一巡後はリバウンド基調へ。米SOX指数が上昇し始め、東証1部市場でもレーザーテックなど半導体関連が躍動。半導体関連の中小型株にも物色が広がった追い風も受けたといえそうです(新興株市場ではシキノハイテックやオキサイドなど直近IPOの半導体関連も人気化)。

 19日開催の決算説明会では、レーザアイウェアの今期販売台数計画を800~1,000台弱(前期は276台)と示しています。前述の国内大手証券が強気に見ていた理由も「レーザアイウェア事業の今期黒字転換」。今後の四半期決算で、レーザアイウェア好調による黒字転換の兆しを示せば、ガイダンスのネガティブイメージは払拭(ふっしょく)できそうです。

4 プレミアアンチエイジング(4934・東証マザーズ)

 マザーズ軟調な5月にあって、18営業日中12営業日で上昇。月間騰落率は40%を超えて上場来高値を更新し、株価の上昇で知名度・流動性とも跳ね上がった銘柄でした。4月下旬に、中国テンセントと中国事業での戦略提携を発表。

 スキンケアブランド「DUO」の中国展開にとって最良のパートナーと組んだことで、株価も急騰。ただ、マザーズの地合い悪化に飲み込まれ、5月の月前半だけで“テンセント提携分”をほぼ消すほどの調整に。

 ただ、月後半に怒涛の上昇。4月末に67万株だった信用買い残は5月末に60万株に減少させています。信用買い残を減らしながら大きく上昇したということは、個人の信用買い以外(中小型ファンドやヘッジファンドなど)の買い越し要因が大きかったと見られます。

 業績進ちょく率から再増額修正も見込めること、株式分割が期待される株価水準になったこと、業態的に株主優待を始める可能性もあること―などを内包し、目下のマザーズ最強モメンタム銘柄に。

5 テクノホライゾン(6629・ジャスダック)

 決算失望で売られる新興株が多発した5月でしたが、決算通過で評価を高めた代表例が同社だったといえます。10日発表した今2022年3月期は、売上高が前期比25%増の330億円、営業利益が同24%増の30億円の見通し。

 コロナ禍でオンラインでの授業や会議が浸透し、電子黒板などの需要が急増。この流れは続く一方、半導体不足の影響を考慮して保守的に見積もった面もあるようです。

 ジャスダック銘柄ということもあり、決算発表直前まで予想PER7倍台と割安放置されていました。月間49%の大幅上昇となっても、今期予想ベースのPERは10倍を超えた程度。グロース株的な成長性はありますが、金利上昇局面に耐性のあるバリュー株にも見えます。