ホンダ、日本初の脱ガソリン宣言!株価はコロナショック前に回復。今後も上昇か。

 話は1992年6月にさかのぼります。場所はリオデジャネイロ(ブラジル)でした。地球サミット(国連環境開発会議)という国連の会議が開催され、世界各国の代表らが参加し、地球温暖化や森林破壊などへの対応について話し合われました。この会議が、現在も続く「気候変動枠組条約」の起点とされています。

 そして1997年12月11日、国立京都国際会館で開かれたCOP3(第3回気候変動枠組条約締約国会議)で、京都議定書が採択されました。同議定書でうたわれたのは、先進国を中心に、温室効果ガスを2008年から2012年の間(第1約束期間)に1990年比で約5%削減することでした。

 具体的な数値を伴った削減目標を設定した京都議定書は、温室効果ガスを削減するだけでなく、地球温暖化という共通の課題を認識し、国際社会が同じ方向を向いた、という意味がありました。

 第1約束期間が終了する間際の2012年12月に、ドーハ(カタール)で京都議定書の改正案が採択されました。2013年から2020年の間を第2約束期間として、温室効果ガスの排出量を1990年比で少なくとも18%削減することがうたわれました。(日本は不参加)

 そして2015年12月12日、現在発効中の「パリ協定」が、パリ(フランス)で採択されました。京都議定書との主な相違点は、対象となる国が世界中の参加国(先進国・新興国・途上国問わず)となること、目標達成は義務ではないこと、などです。

 そのパリ協定をめぐっては、トランプ米大統領(当時)が2017年6月1日に脱退すると宣言し、2020年11月4日に脱退手続きが完了しました。脱退は、同協定採択後初でした。しかし、同年の米大統領選で勝利したバイデン氏が、就任翌日の2021年1月21日にパリ協定に復帰する大統領令に署名をし、復帰を果たしました。同協定で一つの目安とされている2030年まで、世界が一丸となって温暖化対策に取り組む素地が回復したと、安堵(あんど)感が沸きました。

 壊れかけたパリ協定を修復し、かつ目標を厳格化すべく、先週4月23日から24日にかけて、米国主催の気候変動に関する首脳会議(サミット)が開催されました。温暖化対策を推進するムードが高まる中、同サミットでは日米欧中をはじめとした主要国がこぞって削減目標を上乗せしました。

 目標を野心的な内容に変更した各国でしたが、同サミットの初日となった4月23日、日本のとある大手自動車メーカーもまた、環境問題への取り組みにおける、野心的な目標を掲げました。本田技研工業(ホンダ:7267)です。

 同社は同日、2040年に、EV(電気自動車)とFCV(燃料電池車)の世界全体の販売比率を100%にする、という目標を掲げました。期日と比率と地域を明示した上で、「脱ガソリン車」を意味するEV・FCVへの転換を示したのは、日系メーカーではホンダが初めてと言われています。

 世界も、そして企業も、地球温暖化という同じ課題を解決すべく、足並みがそろってきているわけです。今後の各国・各企業の取り組みに注目です。

 以下のとおり、同社や米国の自動車大手のGeneral Motors(ゼネラルモーターズ:GM)の株価は、2020年春に発生した新型コロナショック後、急回復しています。消費減少が懸念される中、日米の自動車大手の株価を支えたのは、EVなどの電気自動車へシフトする方針を明確に打ち出してきたことが、一因と筆者は考えています。

 コロナ禍でさらに浸透が加速しているESG(環境・社会・企業統治)にも冠されているとおり、環境配慮は国や企業の価値を向上させる一因とみられます。その中にあって、自動車メーカーにおけるEVへのシフトは、株価上昇の一因となっているとみられます。今後も、日本初、脱ガソリンを宣言したホンダ(7267)の株価に注目です。

図:本田技研工業(7267)とGeneral Motors(GM)の株価

出所:ブルームバーグのデータより筆者作成