人民元は次の基軸通貨となるのか?

 中国では複数の都市においてデジタル人民元の試験的な採用が始まっており、既に香港との越境取引も完了した。主要中銀では初めて実用化する方向にある。また、2022年2月の北京冬季五輪に向けて広範な展開が予想されており、今後、デジタル人民元の国際的な利用も想定しているという。国際社会の既存の枠組みを揺るがす動きが通貨面でも着実に進行している。

 ペイパルマフィアのピーター・ティール氏が6日、リチャード・ニクソン財団のバーチャル会議に参加し、中国政府が米国の外交・金融政策を弱体化させる手段としてビットコインを支援している可能性があると警告し、暗号資産の規制強化を検討するよう米国政府に強く求めた。

 ティール氏は以前より、「暗号通貨は自由主義であり、AIは共産主義」とコメントしており、暗号資産に対しては好意的な姿勢を示している投資家の一人である。ティール氏によると、暗号通貨はオープンソースで、技術的な能力を持っている人なら誰でも参加することができる上に、誰でもマイニングして新しいコインを手に入れることができる。

 その一方、人工知能はそれ以前のトレンドやビッグデータに依存しており、そのビッグデータは大きな主体によって収集される。歴史的に共産主義政権は、高度に中央集権化された計画経済を作ろうとした。十分に強力なAIは、数千マイル離れた場所から数カ月前に農民のジャガイモの収穫量を正確に予測するという官僚の夢を実現することができると。

 今回、ティール氏は、「中国は米国が基軸通貨を持っていることを好ましく思っていない。なぜなら、石油のサプライチェーンやあらゆる種類のものに対して、大きな影響力を持つことになるからだ」とし、「現時点でビットコインをある程度、米国に対する中国の金融兵器と捉えるべきでないかと思う。フィアット通貨(法定通貨)を脅かし、米ドルにとって特に脅威になる」と発言した。

元は法定通貨に対して強い動きとなっている一方、対ビットコインでは下落している

出所:ゼロヘッジ

 ティール氏は「中国がビットコインをロングにしていれば、恐らく地政学的観点から、厳密にそれがどう作用するか米国はより厳しく問う必要がある」と主張したが、今後、ドルの基軸通貨としての地位を揺るがす兵器となるのだろうか。

 なお、ティール氏は、中国が人民元を基軸通貨にはしようとしていないと推測している。なぜなら、基軸通貨にする場合、中国政府は資本収支を明らかにすることなど「やりたくないこと」をやらなければならないからだと述べた。