ドル/円を動かす3大要素、一番重要なのは「日米金利差」

 為替を動かす要因は無数にありますが、重要度の高いものに絞れば、3つです。

【1】日米金利差
 ドル金利が上昇し、日米金利差が拡大すると、円安(ドル高)になります。
 ドル金利が低下し、日米金利差が縮小すると、円高(ドル安)になります。

【2】世界的な株高・株安
 世界経済に不安が広がり、世界的な株安が起こると、安全資産として「円」が買われます。これを、「リスクオフの円高」と呼びます。不安が緩和し、世界的な株高が起こると、金利の低い「円」は売られます。「リスクオンの円安」が起こります。

【3】政治圧力・購買力平価
 米国政府筋から、円安を非難する発言が増えると、円高(ドル安)が進みます。
 米国政府が、円安を容認している間は、円安(ドル高)が進みやすくなります。
 過去の経験則では、購買力平価(企業物価ベース)よりも20%以上、円安が進むと、円安批判の政治圧力が高まります。

 中でも一番重要なのが、【1】日米金利差です。米FRBは、2023年までゼロ金利(政策金利であるFF金利の誘導水準を0.00~0.25%に維持)を維持する予想を出しています。

 ところが、米景気が年後半にも過熱するリスクが出てきたことを織り込んで、米長期金利は1.7%台まで上昇しました。米短期金利は政策的にゼロ近辺に抑えられていますが、長期金利に米景気が急速に回復する可能性が織り込まれ始めています。その長期金利の動きに触発されて、為替市場でもドル高(円安)が進みました。

 もう1つ、重要な役割を果たしているのが、世界的な株高・株安です。政治・経済さまざまな要因で世界的に不安が高まり、株が売られる時は、安全通貨が買われ、高リスク通貨が売られます。対外純資産が世界最大で、継続的に経常黒字を稼ぎ続けている日本「円」やスイスフランは、安全通貨の代表です。

 一方、対外負債の大きい高金利通貨(ブラジルレアル、トルコリラ、南アフリカランドなど)は、高リスク通貨の代表です。

 米国が経常赤字国で、対外負債が大きいので、米ドルは対円では高リスク通貨として動いていました。したがって、過去には、世界的な株安局面で円高、株高局面で円安が進むのが普通でした。

 ただ、近年、米ドルの地位が変わりつつあります。国際通貨としての力が一段と強くなった結果、円以外の通貨に対しては、安全通貨として動くことが多くなりました。その結果、対円でもかつてのように「株安で円高」「株高で円安」という明確な反応は見られなくなりました。