米中対立は、50年続く「米中冷戦」へ

 米中対立は、これから50年続く「米中冷戦」に発展すると私は考えています。米中対立は根が深すぎて、抜本的な解決策がありません。貿易戦争から始まり、ハイテク覇権争い、アジア・太平洋圏での勢力争いにも発展しています。

 政治体制をめぐる対立も解決策がありません。米国は、中国の「国家資本主義」を批判しています。国の補助を得た中国企業が半導体・液晶・スマートフォン・車載電池・5Gなど世界の有望市場で次々とトップシェアを取っていく戦略です。中国は、成長の根幹にかかわる「国家資本主義」を米国に批判されたからといって、やめるつもりはありません。

 日本は明治時代に、自由民権運動を抑圧しつつ国家主導で産業育成を進め、経済を急速に発展させました。時代背景もやり方もまったく異なりますが、国家主導で経済を強化する中国のやり方に似た部分はあります。

 国家が強権を持つことで、欧米の民主主義国家より早く新型コロナウイルスの感染を収束させられたことも、中国が自信を深め、さらに国家権力を強化する誘因となっています。

 米国との貿易戦争は、泥沼に落ちる可能性があります。中国企業は、歴史的な流れからすると、そろそろ自国からの輸出を抑え、米国での現地生産をどんどん立ち上げていかなければならない段階に入っています。ところが、米国との関係をここまで悪化させてしまうと、中国企業が米国で現地生産を立ち上げるのは困難になりつつあります。

 日本は、1980年代に米国と苛烈な貿易戦争を体験しました。その後、日本企業はどんどん米国での現地生産を増やしました。その結果、日米の貿易戦争は、影を潜めました。中国企業は、日本と同じように米国での現地生産を増やそうとしても、政治的な対立でできなくなっています。

 2020年の中国の対米貿易黒字は、前年比7%増の3,169億ドルとなりました。トランプ政権が対中制裁関税をかけても、中国から米国への輸出増加には歯止めがかかっていません。これが、バイデン政権下でも、新たな火種となると考えられます。