景気と株式。業績の伸びを追いかける

 よく「のど元過ぎれば」という表現がありますが、1回目の政策金利の利上げが発表された後から、投資家は新しい切り口で相場に取り組もうとします。「そもそも利上げされたのは、経済が好調だからだ」というわけです。つまり、ようやく立ち直った経済に素直に喝采(かっさい)し、業績の伸びを追いかけるような株の買い方が主流になるわけです。これが業績相場です。

 そのような相場は、プロにとっても、株式投資を始めたばかりの投資家にとっても、分かりやすい相場です。鉄鋼、自動車、工業などの業種は固定費が高いビジネスです。そのようなビジネスでは、ある程度、売上高が確保できないと利益が出せません。そのことを「損益分岐点が高い」と表現します。

 しかし、ひとたび売上高が損益分岐点を超えると、今度は面白いように純利益が伸び始めます。なぜなら売上高の伸びに対して、固定費の伸びはそれほど伸びないからです。そうなれば追加的な売上高の伸長は、面白いように利益にはね返ってきます。低位株、「重厚長大」的なイメージの株などが人気化するのは、このような局面です。

 さて、この時期の相場では市場参加者の数がだんだん増え始め、信用取引の残高も膨らみ始めます。IPO(新規株式公開)などの件数も増えます。企業買収のニュースも新聞紙上を賑(にぎ)わすようになり、自分がたまたま投資していた先の企業が買われて、ラッキーな思いをする投資家が増えてきます。経済指標も良いし企業業績も良い。そして株価も高い……というわけで、株式投資が一番面白く感じられる局面と言えるでしょう。

 しかし、中央銀行はその間もインフレに目を光らせているものです。金利政策が経済の強さに対して緩和的過ぎると、それは将来のインフレ誘発の原因となってしまいます。このため規則正しいペースで、利上げをします。

 面白いもので、投資家は1回目の利上げをあれほど恐れたにもかかわらず、2回目、3回目になると利上げに慣れっこになってしまい、利上げのニュースには関心を払わなくなります。「どうせ金利の水準はまだまだ低いのだし、今は経済に勢いがあるから、大丈夫」というわけです。