マーケットの天井は忍び足でやってくる

 本章の冒頭で、金利と株式は競争関係にあるという話をしました。するとヒタヒタと利上げされているという状況は、投資家が知らず知らずのうちに金利という競争相手がだんだん手強くなることを意味します。でもこの頃には、投資家はすっかりリスクに鈍感になってしまい、楽観的な態度になりがちです。

 相場の天井では、指数が新高値を更新していても、騰落線が伸び悩む、新高値銘柄数が減少するなどの、注意深くマーケットを観察している人だけが気がつく微妙な変化が現れます。

 マーケットの天井は、投資家が皆、安心しきって、枕を高くしてぐっすり安眠しているときに、勝手口から忍び足で侵入してくるのです。

 経済や企業業績のニュースはすこぶる良いにもかかわらず、買っても買っても不思議に儲からない……そういう状態になったとき、今まで無視してきた金利水準は、いつの間にかずっと高くなってしまっていることに気がつくのです。

 株式市場が下落を始めると、不動産価格も崩落することが多いです。あらゆる資産価格が下落し、世の中は急に不景気になります。この局面での株価の調整幅は、中央銀行が最初に利上げに着手したときの調整よりもずっと大きい場合が多いです。また、急いで利下げに転じても、しばらくの間はそれが資産価格の下落を食い止めることはできません。株式投資で一番大きく損するのは、この局面です。

 以上が、景気と金利が株式に対して与える影響の概略です。自分の立ち位置が大体把握できれば、その時々にやるべきことがハッキリします。だから「今がサイクルのどこに相当するのか?」ということを常に自問する習慣をつけてください。

第7章「株はいつ買って、いつ売る?」はこちら