米国株市場はFOMCの内容を好感

 最後に米株市場についても考えてみます。米株市場も米長期金利上昇への警戒感に伴い、IT・ハイテクといった成長株が売られ、景気敏感株が買われるという構図に変わりはありません(むしろ、日本株の方が米株市場の構図に倣っているのですが)。

 米国株の継続的な上昇には、足元で買われている景気敏感株がどこまで成長株の受け皿になれるか、そして、成長株との買いのサイクルが今後も続くのかが焦点になりますが、先週のFOMCでは予想していた以上に「ハト派寄り」の内容だったことが好感され、米株市場は上昇という初期反応を見せました。

 今回のFOMCで注目されていたのは、FOMCメンバーによる経済見通しの分布を示した、いわゆる「ドット・チャート」の状況と、FOMC後に開かれる記者会見でのパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の見解の2点でした。

 ドット・チャートでは、2021年の実質GDP(国内総生産)の成長率の予想中央値は6.5%と、昨年12月時点の予想(4.2%増)から大幅に上方修正され、利上げのタイミングについても、多くのメンバーが2023年までゼロ金利を維持する見通しとなりました。また、パウエルFRB議長の記者会見では、雇用と物価上昇率の目標が達成されるまで現在の緩和的な金融政策を維持する旨を述べており、「経済の回復・正常化と金融緩和がしばらく両立していく」という安心感が広がり、株高につながりました。

 とはいえ、FOMC後の米債券市場は、短期債(2年・5年など)の利回りが低下する一方で、10年債などの長期債の利回りは上昇したほか、先ほどのドット・チャートでも、2021年の物価上昇率見通しの中央値が前回の1.8%から2.4%へと引き上げられています。さらに、週末の19日(金)には、米FRBが新型コロナウイルス危機に対応して導入した銀行の資本規制の緩和(補完的レバレッジ比率)を延長しないと発表したことによる影響も注目されます。

 もちろん、足元の金利上昇のペースアップは、コロナ禍の反動による一時的なものという見方もありますが、米議会で先日可決した追加経済政策は約1.9兆ドルと大規模です。本来、こうした財政出動の経済政策は、景気サイクルの乱れや、コロナ禍といった突発的な事象によって生じる需要と供給の差(ギャップ)を埋めるという目的がありますが、2020年の米国名目GDP額は20兆9,330億ドルで、2019年(21兆4,330億ドル)とのギャップは5,000億ドルぐらいですので、今回の追加経済政策の規模はギャップに対して「大き過ぎるのではないか?」という見方は今後もくすぶり続けることが予想されます。

 FRBの基本的な金融政策スタンスは、「日本や欧州のようなデフレは避けたい」、「そのために、ある程度のインフレにさせたい」の2点ですが、「でも、急激な物価上昇や金利上昇は困るし、バブルの過熱も抑制させたい」というホンネが見え隠れしている状況と言えます。

 先日成立した大規模な米追加経済対策は、足元では景気敏感株買いの口実になっている半面、今後はFRBが懸念しているホンネを加速させてしまうかもしれないもろ刃の剣でもあります。さらに、足元では国内外の新型コロナウイルスの感染状況が芳しくないほか、一部ワクチンの副作用懸念など、株式市場は反転リバウンドへの火種を抱えている状況です。

 今週はスケジュール的に注目イベントが少ないですが、来週3月29日に国内3月決算企業の権利確定日が控えていることもあり、株安の場面で権利獲得ねらいの買いが入ってくることも考えられます。日経平均の3万円やTOPIXの2,000pといった株価の節目をはじめ、移動平均線などのテクニカル指標を意識した押し目の確認と、買いの強さが試される週になりそうです。