日本の製造業の競争力は健在

 日本は、製造業王国です。IT企業が躍進する時代になったとは言え、日本の産業構造を見ると、今でも自動車産業を中心とした製造業の比率が高いのは事実です。それがわかっているから、外国人投資家の多くはこれまで日本株をアンダーウエイト(通常決められた投資比率よりも低くすること)してきました。

 ところが、昨年11月以降、外国人が日本株を買い越しに転じつつあります。世界景気回復の初期には、製造業の利益回復モメンタムが強くなることを、外国人投資家は知っているからです。
中国・韓国の製造業が躍進する中で、日本企業の競争力低下が目立つようになりました。「日本の製造業はもうだめだ」と悲観的な気持ちになる人もいるようです。私はそこまで悲観的になる必要はないと思います。

 民生エレクトロニクスや半導体業界で、日本企業の競争力の低下は著しいものの、産業用エレクトロニクス、自動車、ロボット・機械産業では、今でも日本企業の強さが光ります。

 自動車産業では、これからEV(電気自動車)が世界を支配する時代になると言われて、ガソリン車主体の日本企業に悲観的な見方が広がっていますが、やや早計と見ています。人類はまだまだガソリン車無しでは生きていけません。小型トラック、二輪車、自動車部品を始め、日本は自動車に関連する産業で高い技術力を持っています。これから世界の自動車販売の回復が強まるにしたがって、日本の自動車関連株の利益モメンタムは急速に回復すると予想しています。

増加するTOB、買収価値の高い企業に注目

 最近、日本の上場企業に対するTOB(株式公開買い付け)が増えています。大幅なプレミアムをつけて経営権を取得する例も出てきました。日本株には、財務内容が良好で、利益も配当もしっかり出しているのに、株価が解散価値と言われるPBR(株価純資産倍率)1倍を割り込んでいる銘柄が多いので、当然かと思います。

 昨年、島忠に、DCM HDがTOBをかけ、島忠経営陣が同意を表明したのに、後からニトリがさらに高い価格で島忠にTOBをかけて話題になりました。島忠経営陣はニトリのTOBに同意したので、結局、島忠はニトリの傘下に入ることになりました。

 島忠の株価が、買収価値から見てきわめて割安な水準に放置されていたから、このようなことが起こったのだと思いました。島忠は、財務内容が良好で、収益基盤もしっかりしていましたが、TOBがかかる前の株価はPBR1倍を大きく割れていました。ニトリは、買値を大幅に上げて島忠の経営権を取得しましたが、決して割高な価格で買収したわけではありません。元の価格がきわめて割安だったからです。

 現在、日本の小型株には、財務内容・収益力からみて、きわめて割安と判断される銘柄がたくさんあります。そんな割安株に対しては、30~50%高い株価でも、全株を取得できるならば、買い手にとって十分なメリットがあります。これからも、日本の割安株へのTOBは増加すると考えています。