古いイメージのまま。投資家に物流で稼ぐ「今の姿」が理解されていない

 今、物流業界は、成長産業です。コロナ禍でEC(Eコマース)が急拡大し、宅配業界は超繁忙です。国境を超えた、越境ECも拡大しつつあります。安田倉庫は、宅配事業を直接やっているわけではありませんが、それを支える物流・流通加工作業で収益を上げています。

 安田倉庫の事業には、2つの柱があります。物流事業と、不動産事業です。新型コロナウイルスの影響がまだ大きくない2020年3月期、同社は、経常利益(44億円)と純利益(29億円)で過去最高益を更新しました。その期のセグメント(部門別)情報を見ると、物流事業で32億円、不動産事業で22億円のセグメント利益をあげています。不動産で安定収益を稼ぎつつ、物流事業で利益を伸ばすビジネスモデルが確立しつつあると考えています。

 倉庫の古いイメージは、「ただ、モノを保管するだけ」ですが、近年の安田倉庫は、そうではありません。モノを保管、配送するだけではなく、品質検査・商品の銘入れ・セット組み・梱包・包装・返品処理など、さまざまな流通加工作業を行っています。それに伴い、高い付加価値を得られるようになってきたことが、投資家に理解されていないと思います。

 安田倉庫は、メディカル物流・IT機器物流といった、スペシャル・スキルが必要な分野でも、強みを持ちます。メディカル物流事業では、インフルエンザワクチンや、うがい薬などの医薬品、カテーテルや人工心肺などの医療用機器を扱っています。また、IT機器事業では、IT機器の初期設定や動作確認、データ消去や廃棄まで行っています。

 物流事業は、国内だけでなく、海外展開も行っています。中国・香港・ベトナム・インドネシアなどに拠点を持ち、内外一貫の物流を受託できる体制を整えつつあります。国際物流は、まだ収益性で課題がありますが、将来的には、国内物流と並ぶ柱となっていくと思います。