株式市場は「2021年に向け景気は持ち直す」を織り込むか

 上述のように、コロナ危機が拍車をかけた「米中冷戦(覇権争い)」を巡る思惑も金相場の押し上げ要因と思われます。

 とは言っても、緊張状態に陥っても(偶発的衝突は別にして)米国も中国も「全面戦争」に向かう意志もメリットもないと考えられます。米国とソ連(現在のロシア)が「冷戦状況」にあった1980年代までと同様だと思われます。

 一方、実質金利が低下し、感染拡大を防ぐ「ワクチンの開発・量産」が進めば、(遅かれ早かれ)市場は「2021年に向けた景気回復」を織り込むと思われます。

 図表2が示すとおり、今年前半はパンデミック(感染症の世界的流行)とロックダウン(都市封鎖)で主要国経済は景気後退入りを余儀なくされました。市場は米国、中国、日本の景気が1Q~2Qをボトム(底)にして年後半から上向く見通しをメインシナリオにしています(市場予想平均)。

 このシナリオは、
(1)ロックダウン再導入は政治的に可能性が低い
(2)大規模な金融緩和策と景気刺激策が奏功する
(3)ワクチン開発・量産で「コロナ不安」が徐々に終息に向かう

との前提に立っています。

<図表2>主要国経済は来年に向け持ち直す見込み
 

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2019年4Q~2021年2Q)

 図表2では、中国が1Qに歴史的マイナス成長(▲6.8%)を記録。米国は2Qが史上最悪の▲32.9%となっており、日本も大きな悪化を記録すると見込まれています。

 その後の経済活動回復で中国の2Qは+3.2%(実績値)、米国と日本も3Qはそろってプラス成長に転換すると見込まれています(市場予想平均)。

 世界株式は2~3月に30%以上下落して景気後退をいったん織り込みました。その後は「不況下の株高」(流動性相場)を示現したことが確認できます。