商社はビジネスモデルを転換しつつある

 現在の商社は、投資家のイメージとかなり異なった姿になってきています。リーマン・ショック後、資源価格が下落する中で、資源事業の利益は減少しました。それで、利益が大きく減少したかというと、そんなことはありません。資源事業の利益減少を、非資源事業の利益拡大でカバーし、高水準の利益を維持してきました。それで資源事業への依存が低下し、利益構成は大いに改善しています。

 大手総合商社は、利益の安定性を確保するために、非資源事業を意識して拡大してきました。特に、食料品・生活関連事業や電力事業など、景気変動の影響を受けにくい安定的事業の比率を高めてきました。

商社に再び成長の機会が出てきたと判断

 総合商社の戦略は、資源もなく少子化が進む日本がどう生きていくべきか、まさにその道筋を示しています。政府が成長戦略としてやっていくべきことは、商社がほとんど手をつけています。まず、資源のない日本が生きていくのに不可欠な貴重な「日の丸資源会社」となっています。

 ただし、資源に依存しすぎないよう、非資源事業も拡大しました。中でも注目できるのは、新興国での社会インフラ整備事業です。発電所・鉄道・上下水道などの建設・運営を幅広く手がけています。

 総合商社は、IT・バイオ・新エネルギーなど、今すぐ花開かなくても、将来いつか大きな成長のタネになりそうなものには、片っ端から手を出しています。その貪欲さこそが、今の日本に欠けている成長力の獲得につながると思います。

 それでいて、赤字が長期化した場合の撤退ルールについても厳格に適用しています。カントリー・リスク管理も徹底していて、特定国で過度なリスクを持たないようにしています。かつて新興国ビジネスで何度も失敗して損を出した経験が生きて、今はビジネス巧者となっています。

 大手5社でやっている事業、リスクの取り方は異なりますが、いずれも新興国の成長を取り込みつつ、巧みにリスク管理している有望な投資対象だと思います。