デイトレードは苦痛でしかなかった

──井上さんは2012年末に交通事故に遭っていますよね。

 会社からの帰り、駅から自転車で家に向かう途中、70㎞のスピードで走ってきた自動車にはねられ、2カ月間入院しました。保有していたファンドの値が上がり始めたときは病院にいたわけです。

──その経験はその後の人生に影響を与えましたか?

 それはそうですね。退院後もしばらく自宅療養していたのですが、後遺症が残る可能性があったため、いろいろ将来について考えました。これまでと同じように会社員生活を送ることができるのだろうか、いったい僕の人生はどうなってしまうのだろうかと。当時、結婚したばかりで、妻が励ましてくれたので救われましたが。

──考えた結論は?

 この先、これまで通り働き続けられるかどうか自信もなくなったため、会社に頼らず、生きていく方法はないだろうかと考えました。デイトレードに挑戦したんです。

──結果はどうでしたか?

 月々の積み立てとは別に、ボーナスの蓄えがあったので、そのなかの100万円を元手に始めたのですが、最初は絶好調で、4カ月で2倍に増やすことができました。

──おお! やっぱり投資のセンスがあるのでは?

 僕もそう思いました。自分は天才かもしれないって(笑)。でも、ぜんぜん違いましたよ。その後、何をやってもうまくいかなくなり、わずか3週間で100万円の稼ぎがすべてなくなってしまいました。

──甘くはなかったわけですね。

 そうですね。デイトレードはチャートの形状から値動きを分析できる能力に長けている人に向いていると思います。トライ&エラーを何度も繰り返し、このタイミングで購入、このタイミングで売却というのを実践できる能力を持つ人でないと難しいでしょう。僕には無理だと思い、すぐに撤退しました。

──でも、5カ月では向いているかどうかわからないのでは?

 それはそうなんですけど、何というか、まったく楽しくなかったんですよ。むしろ、毎日朝9時に市場が開いてから15時に閉まるまで、ずっと板やチャートを監視しているのが、苦痛以外の何物でもなかった。その意味でも続けられないと思いました。

──たしかに自分が楽しいと思えるかどうかは大事ですよね。では、次回はもう1度、投資信託の積み立ての話に戻って、お伺いします。

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