ドル安の足音が聞こえてきた

 米国の連邦債務は最初の1兆ドルを蓄積するのに2世紀以上かかっている。現在の米国の負債総額は26兆ドルである。驚くべきことは最近の増加ペースで、3月23日の総負債は「わずか」23.5兆ドルで、FRBが無制限の量的緩和を発表した日であり、2カ月半で2.5兆ドルの負債が増えている。

米国の連邦債務の推移

出所:ゼロヘッジ

2020年末までに連邦債務はほぼ確実に28兆ドルを超える

出所:ゼロヘッジ

 スティーブン・ローチ(元モルガン・スタンレー・アジア会長)は、6月10日のロイターのコラム『基軸通貨ドル「法外な特権」終了へ、迫る急落の足音-ローチ』で、

「世界の基軸通貨としてドルが法外な特権を享受する時代は終わりを迎えつつある。これは1960年代に米国への不満を述べたジスカールデスタン仏財務相(当時)の言葉だ。あれから約60年がたち、世界は米国の特権に深刻な疑問を抱くようになった。(中略)これまでのところ、昔ながらの有事のドル買いといった逃避需要でドルは堅調だ。しかし貯蓄率の急低下で経常赤字は大幅に拡大し、2005年に記録した過去最悪のGDP比6.3%を大きく上回るとみられる。基軸通貨であろうがなかろうが、このような状況でドルは無傷ではいられない。問題は、何がドル急落の引き金を引くのかということだ」

 と述べている。