レイ・ダリオだけではない。FRBも「資産価格は大幅に下落する可能性がある」と警鐘を鳴らしている。

 FRBは15日、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)がさらに深刻化した場合、株式などの資産価格は「大幅に下落」する恐れがあるとして強い警戒感を示した。中でも商業用不動産市場が大きく打撃を受けるとしている。

 FRBは年2回公表している金融安定性報告で、「このパンデミックが予期せぬ方向に進んだり、経済への影響がより深刻になったり、金融システムの緊張が再び高まったりした場合、資産価格は大幅に下落しやすい状態が続く」と指摘。特に商業用不動産は「パンデミック前の時点で、ファンダメンタルズに照らした価格が高かった」ためバリュエーションが低下しやすいとし、接待業や小売業への深刻な打撃にも言及した。

 FRBはまた、2008年の金融危機後に導入された規制がウォール街の回復力強化に寄与したとしつつも、金融システムの脆弱(ぜいじゃく)性が引き続き新型コロナ感染拡大に伴う経済的ショックを増幅させることになったと指摘した。

 報告では、ヘッジファンドの一部が「深刻な影響」を受け、そのことが市場の変調に拍車を掛けたと分析。極めて高水準のレバレッジを抱える幾つかの大手ヘッジファンドが苦境に陥れば、市場の緊張が高まった局面でマージンコール(追加証拠金の要求)に対応したり、ポートフォリオリスクを減らしたりするために多くの資産売却を迫られる可能性があるとし、「こうしたレバレッジ解消の動きが、3月の段階で金融市場の流動性低下の一因となった恐れがある」としている。

 このほか、レバレッジドローンのデフォルト(債務不履行)が2月と3月に増加しており、経済動向次第では「増え続ける可能性がある」とし、レバレッジドローン市場の状況悪化は資金の貸し手や、こうしたローンの多くを担保資産として証券化されたローン担保証券(CLO)に悪いニュースとなると付け加えた。

(2020年5月16日 ブルームバーグ「FRB、資産価格「大幅に下落」と警告-パンデミック悪化なら」)

 QEインフィニティ(無限大介入)で、「買いだ!買いだ!」と騒いでいるのは、リーマン・ショックも下げ相場も知らないミレニアル世代の運用者だけである。この世界で長く生き延びてきた運用者は、下の記事のようにこの相場を決して楽観的にみていない。

 株価は非常に過大評価されている。数週間前にはあり得ない話だったが、今や金融界の著名投資家がそうした見方に賛同している。

 米株式市場は先月、月間ベースで1987年以来の大幅上昇を見せたが、伝説的ヘッジファンド運用者のスタン・ドラッケンミラー氏は12日、株式のリスク・リターンはこれまでの職業人生で見た中で最悪だと指摘。ヘッジファンドのアパルーサ・マネジメントを率いるデービッド・テッパー氏も13日、1999年のバブルを除けば最も過大評価された状態にあると述べた。

 こうした見方はウォール街の資金運用者の間で定着しつつある。著名株式投資家のビル・ミラー氏や資産家のポール・シンガー氏、ポール・チューダー・ジョーンズ氏なども市場や経済について疑問を呈している。  

 ミラー氏は電子メールで、「3月18日にCNBCで述べた買い好機だが、私が考えていたほど長くは続かなかった。3月23日の安値から約30%上昇した後は小休止またはある程度の調整が妥当だと考えている」と説明。S&P500種株価指数が現在の水準から4-5%下落する可能性があると予想した。

 資産家のレオン・クーパーマン氏は13日に電話で、政府のコロナ対応が増税や規制強化につながると4月末の電子メールで自身が予測したことを挙げ、S&P500種は2200-2800の間に下落すると予想。これは現在の水準から最大22%下げることを意味する。

 経済活動再開についてトランプ大統領に助言するグループの一員である資産家のマーク・キューバン氏は電子メールで、「株は過大評価されている」と指摘し、ドラッケンミラー氏の株に対する見方に同意すると述べた。

(2020年5月14日 ブルームバーグ 「ウォール街の重鎮、株価は過大評価と相次いで警鐘」)

 この相場は一筋縄ではいかないだろう。追加のQEインフィニティや米大統領選挙に向けてプチ・バブルやリバウンドの局面があるからである。

NYダウの1929年と2020年のアナログモデル(パターン分析)

出所:ゼロヘッジ

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「グローバリゼーションとファイナンシャリゼーションは、拡大が止まると死ぬ」ということが、十分に理解されていない。サメが前方に泳ぐのをやめると死ぬのと同じように、グローバリゼーションとファイナンシャリゼーションはその拡大が止まると死んでしまう。その実行可能性は拡大に依存するからだ。