自動車業界の「3つの不安」

 自動車株のパフォーマンスの悪さは、以下の3つの不安が背景にあると考えています。

【1】世界自動車販売の不振

 2018年・2019年と2年続きで減少する見込みです。今年(2020年)の回復が見込める状況に、まだなっていません。

<世界の自動車販売台数>

(出所:OICA[国際自動車工業連合会]、商用車含む、2019年予想は楽天証券経済研究所)

 2019年は、2018年に続き2年連続で、世界の自動車販売台数が減少した模様です。貿易戦争の影響で、特に中国の自動車販売が落ち込みました。

 ただ、そうは言っても、いつかは世界の自動車販売は持ち直すでしょう。もし、自動車販売が今年持ち直すならば、経験則では、そろそろ自動車関連株のパフォーマンスが良くなるはずです。ところが、自動車関連株は相変わらず不振です。2年連続で不振だった世界販売が、今年も厳しい可能性を織り込んでいます。

【2】貿易戦争のターゲットとなる不安

 日本車にとって最も重要な市場である米国で、トランプ大統領が、保護貿易主義を前面に出しています。トランプ大統領は、日本の自動車産業を批判し、「競争条件が不公正」と主張しています。ただし、これは、ほとんど言いがかりです。日本は、自動車の輸入に関税をかけていません。一方、米国は、1月1日から発効した日米貿易協定でも、自動車の輸入関税2.5%は残したままです。トラック輸入には25%の高率関税をかけています。

 ただ、実際には米国が仕掛ける貿易戦争で、日本の自動車産業が受けるダメージは限定的との見方が出ています。日本の自動車メーカーは早くから米国で現地生産を拡大してきた功績があるので、日本をターゲットとした関税発動はないと考えられます。

 日本メーカーにとってマイナスとなるのは、北米自由貿易協定の見直しです。日本メーカーがメキシコで生産して米国に輸出している自動車の関税が上がる可能性があります。

 逆に、米国が仕掛ける貿易戦争が、日本車にメリットを及ぼしている部分もあります。米国が、中国に市場開放を迫った効果で、中国は自動車の輸入関税を引き下げました。さらに、世界的に保護貿易が広がる中で、日本とEU(欧州連合)は日欧EPA(経済連携協定)を締結しました。日本の自動車メーカーは、中国や欧州向け輸出の関税が下がる恩恵を受けています。

【3】次世代エコカーでハイブリッド車よりEV(電気自動車)が優勢

 次世代エコカーに、EVを優先する国が増えました。次世代エコカーとして、ハイブリッド車を中心に推進してきたトヨタ・本田など、日本勢に逆風です。

 ただし、中国の自動車行政を担う工業情報化省は、12月に入り、EV・FCV(燃料電池車)に加えてPHV(プラグイン・ハイブリッド車)を新エネルギー車として、販売促進策を打ち出す検討を始めました。ハイブリッド技術で優位にたつ日本車メーカーにとって朗報です。まだPHVを量産できる体制が整っていませんが、将来、PHVが重要な成長の柱となる可能性もあります。