人気トップ7、アナリスト窪田のコメント

 人気上位の7位まで、以下、個別に詳しくコメントします。

【1】イオン(8267)

 かつてイオンには「優待は人気でも業績は今一」というイメージがついてまわりました。今は、業績でも評価できるようになりました。前々期(2018年2月期)・前期(2019年2月期)と2期連続で営業最高益を更新し、今期(2020年2月期)も営業最高益を見込んでいます。

 グループ会社の再編(旧ダイエー店舗など不採算店の整理)にコストがかかる(リストラ関連の特別損失が出る)ので連結純利益はまだ最高益に届いていませんが、再編が完了する4~5年後には、純利益も最高益を更新すると考えています。

 前期は、地震や大型台風、暖冬が業績にマイナス影響を及ぼしましたが、わずかながら(+0.9%)最高益を更新できたのは評価して良いと思います。今期は、10月に消費増税がありましたが、それでも会社は、営業最高益を見込んでいます。

 イオンの業績で高く評価できるのは、海外(アジア)での利益成長が軌道に乗ってきたことです。イオンは、小売・金融・不動産を含めて、前期、海外で営業利益の16.8%を稼ぐまでになっています。

イオンの所在地セグメント別営業利益:2019年2月期

セグメント名 営業利益 前期比
日本 1,766 ▲5.6%
アセアン 338 +36.5%
中国 14 黒字転換
2 黒字転換
合計 2,122 +0.9%
単位:億円
出所:イオン決算資料

【2】オリックス(8591)

 オリックスは、優待に加え、予想配当利回りが4.2%(12月25日時点)と高いことも魅力です。今期、市場予想では、営業最高益を更新する見通しです。

 オリックスは、長期に安定収益を稼いでいく銘柄と考えています。リース事業でコア収益を稼ぎつつ、信託・保険・事業投資など幅広い多角化で利益を稼いでいます。前期で見ると、海外事業でセグメント利益の31%を稼いでいます。海外で、利益を拡大していく金融株として評価しています。

【3】ヤマダ電機(9831)

 結論から言うと、私はヤマダ電機への投資は見送るべきと判断しています。優待人気株として常に上位に出てくるのですが、ヤマダ電機を長年分析してきたアナリストとして、違和感を覚えています。

 ヤマダ電機は、構造的に収益力が低下しています。同社は、2017年3月期から2019年3月期まで、3期連続で業績見通しを下方修正しました。

 2017年3月期の営業利益を、同社は期初に714億円と予想していましたが、着地は578億円でした。2018年3月期の営業利益は、期初予想が746億円でしたが、着地は387億円でした。そして、前期(2019年3月期)の営業利益は、期初予想が721億円でしたが、着地は278億円でした。

 今期(2020年3月期)の営業利益について、ヤマダ電機は426億円と前期比52.9%の増益を見込んでいますが、達成は難しいと予想しています。上半期(2019年4-9月期)に247億円の営業利益をあげていますが、消費税引き上げ前の駆け込み販売の恩恵を受けています。下半期に消費税引き上げ後の落ち込みがあることを考慮すると、通期の営業利益は、会社予想を下ぶれる可能性が高いと見ています。

 2つの経営戦略のミスが、ヤマダ電機の構造的な収益低下につながっています。1つは、出店戦略のミス。都市部に集中出店せず、郊外や地方に大量出店したのが裏目に出ました。もう1つは、多角化戦略のミスです。エスバイエルを買収して参入した住宅事業が足を引っ張っています。家電販売と住宅販売は、それぞれ専門知識が必要で、シナジーを出しにくい面があったと考えています。

 住宅の販売員には高度な専門知識が必要で、家電量販店でその人員を育成するのは容易でありません。住宅事業の経営そのものにも、下請け業者の管理や部材の調達などで家電量販店とはまったく異なるノウハウが必要です。住宅は新商品の開発競争も厳しくなっています。スマートハウスや介護住宅の開発で優位にたつのは困難です。ヤマダ電機が買収した旧エスバイエルは、ツーバイフォー工法で安価な規格品を作るのに強みがありましたが、多様な商品開発が求められる時代に入って、競争力が低下しつつありました。ヤマダ電機の傘下に入っても、強みを取り戻すのは難しい状況です。

 ヤマダ電機は、先日、経営不振に陥っている大塚家具を子会社化すると発表しました。赤字続きの大塚家具を買収しても業績を立て直すメドは立たず、エスバイエルと同様、経営の重荷となるでしょう。

 もし大塚家具が、すぐれた商品を持ちながら販売力の不足で経営が低迷しているならば、ヤマダ電機の販売力で立て直すことが可能かもしれません。ところが、大塚家具の不振は販売力の問題ではありません。ニトリと比べて商品力で劣後していることが不振の原因です。ニトリは住居製品・生活雑貨で次々と魅力的な新製品を開発し、売り上げを伸ばしています。大塚家具の販売を立て直すには、住居製品でニトリのように魅力的なプライベートブランド品を次々と開発する必要があります。

 ところが、ヤマダ電機には販売力はありますが、家具・住居製品の分野の商品開発力があるとは考えられません。大塚家具の買収が経営判断のミスであったことが判明するのは、時間の問題と考えます。