日経平均先物「踏み上げ」はそろそろ一服か?

 私は過去25年、日本株のファンドマネージャーをやっていました。ファンドマネージャー時代、日経平均先物で短期トレードをする際に、一番重視してみていた指標が裁定残高です。10~11月の日経平均上昇では、日経平均先物の「踏み上げ」が起こっていたと考えられます。それが、以下のグラフから分かります。

日経平均と裁定売り残の推移:2018年1月4日~2019年11月29日(裁定売り残は2019年11月22日まで)

出所:東京証券取引所データに基づき楽天証券経済研究所が作成

 詳しい説明は割愛しますが、裁定売り残の変化に、投機筋(主に外国人)の日経平均先物「空売り(からうり)」の変化が表れます。空売りが増えると裁定売り残が増え、空売りが減ると裁定売り残が減ります。

 上のグラフを見ていただくと分かりますが、裁定売り残高は、2019年7~8月にかけて約1兆円から2兆円まで急増しています。投機筋が、日本株にきわめて弱気の投資判断をして、日経平均先物の空売りをどんどん積み上げていったと推定されます。

 ただし、2019年9月から11月(22日)までで、裁定売り残高は、急減しています。9月6日に約2.1兆円あった裁定売り残高は、11月22日には8,582億円まで急減しました。1兆円以上減ったことになります。この間、空売りを積み上げていた投機筋が、日経平均先物を買い戻してポジションをクリアしたと推定されます。

 その間、日経平均は上昇しています。空売りを仕掛けた投機筋は、日経平均の上昇によって含み損が拡大していきました。じりじり上昇が続く日経平均に我慢ができず、損失拡大を防ぐために、空売りの買戻しを出していったと考えられます。このように、空売り筋に買い戻しを迫る相場の上昇を、「踏み上げ」といいます。10-11月は、日経平均先物の踏み上げによって、上昇が継続したと考えられます。

 ただし、裁定売り残高が既に1兆円以上、減少したので、ここからは、踏み上げによる日経平均先物の買戻し圧力は少しずつ低下していくと考えられます。

 踏み上げ圧力が低下したタイミングで、米中交渉で不安材料が出れば、一時的に日経平均が大きく下がる可能性もあります。日本株が長期的に買い場との判断は変わりませんが、短期的にはショック安が起こる可能性が出ていることには注意が必要です。

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