ブルーチップ(米優良銘柄)の予想PERと利益成長期待

 米国市場では、ダウ平均(ダウ工業株30種平均)に採用されている銘柄群を「ブルーチップ」と呼びます。各産業界を代表する「優良銘柄」を意味し、ダウ・ジョーズ社がセクター(業種)バランスを留意しつつ、収益性、成長性、財務面が比較的しっかりしている銘柄をダウ平均の構成銘柄に選んでいるとされます。

 図表3は、ダウ平均の構成銘柄について「年初来騰落率」の降順に一覧したものです。最上段に示すように、ダウ平均は年初来で19.3%上昇してきました(20日)。ダウ平均ベースの2019年業績(EPS)は約4.2%の減益で着地するとみられますが、すでにダウ平均は2018年に下落。業績低迷を織り込んだとも言われます。

 2019年の予想PERは約18.8倍とやや割高にみえますが、すでに市場は2020年の約17.3%増益(市場予想平均)を織り込む動きをみせ、現在の「2020年予想PER」は16.0倍、「2021年予想PER」は14.8倍と来年以降の業績回復を前提にすれば割高感は薄れます。米国経済が景気後退入りせず、企業業績がソフトランディング(軟着陸)する見通しが前提となっています。

 ダウ平均採用銘柄のうち「年初来騰落率」が最も高い銘柄はアップル(AAPL)の+66.9%とマイクロソフト(MSFT)の+47.3%とメガテック銘柄が1、2位を独占しています。この2銘柄は、S&P500指数やナスダック総合指数を構成する株式時価総額上位2銘柄でもあります。

 IT(デジタル)革命が進展するなか、両銘柄の「2021年の対2018年増減益率(市場予想平均)」はそれぞれ35.2%増益、46.5%増益と見込まれており、ダウ平均の増益率(22.0%)を上回るペースの利益成長が予想されています。市場平均を上回るペースで利益が成長していく期待が強いIT関連銘柄は、株価も市場平均(ダウ平均やS&P500指数)より優勢を維持する可能性が高いと考えられます。

 なお、ユナイテッド・テクノロジーズ(UTX)、ビザ(V)の年初来騰落率が高いのも、「2021年の対2018年増減益率」で市場予想を上回る増益が見込まれているからと言えそうです。プロクター・アンド・ギャンブル(PG)の年初来騰落率(+33.0%)もダウ平均を上回っています。PGは「25年以上連続して配当を増やし続けてきた配当貴族指数」の構成銘柄で「連続増配年数」として62年を記録する安定成長銘柄です。

 なお、ダウ平均は「株価単純平均(修正済み)株価指数」であることで、構成30銘柄で最も値がさ株(370ドル台)であるボーイング(BA)の株価低迷が今年はダウ平均の上値を抑えてきました。株価の重石となったのは、旅客機事故やガバナンスを巡る不安、貿易摩擦を背景とする業績懸念などです。米中摩擦が緩和に向かうと思われる2020年は業績持ち直しが予想されています。BAの株価回復も期待したいところです。

図表3:ダウ平均の構成銘柄と業績見通し(参考情報)

(出所)Bloombergのデータをもとに楽天証券経済研究所作成(2019/11/20)

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