高所恐怖症の売りか、トレンド転換の買いか

 今週の株式市場では、米国でダウ平均株価が史上最高値を更新し、国内でも日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)が年初来高値を更新する堅調となりました(7日)。外部環境の好転を背景にした外国人投資家による買い戻し(ショートカバー)を中心に、日経平均は8月26日に付けた2万261円(終値)から約2カ月半で3,000円上昇したことになります。

 こうしたなか、日経平均は50日移動平均線からの上方乖離率で+7%に達しており、目先は国内投資家の特徴とされる「高所恐怖症」で利益確定売りが重なる可能性があります(図表1)。

 6日の報道では、米中貿易摩擦を緩和させるトランプ米大統領と習近平国家主席による合意文書署名が12月にずれこむとの観測が広まり、米国株の上値を抑える展開となりました。ただ、図表2で見るとおり、日経平均の50日移動平均線は、上向きに転じた200日移動平均線を下から上抜ける「ゴールデンクロス」を示現しており、中期的な視点でみた株式相場のトレンドは転換しつつあります。

 先週以降発表された、米GDP(国内総生産)の実質成長率は、4-7月期が+1.9%(前期比年率で速報値)となったほか、ISM製造業景気指数(10月)、雇用統計(10月)、ISM非製造業景気指数(10月)も市場予想平均を上回り、グローバル面でもJPモルガン・チェース世界製造業景気指数が底打ちの兆しをみせています。

 高所恐怖症で売られる場面はあっても、トレンド転換を重視する投資姿勢なら、株価の押し目は「買い方」に分がある可能性があると考えます。

図表1:対50日移動平均乖離率は+7%に上昇

(出所)Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2015/1/1~2019/11/6)

図表2:2016年秋以来の「ゴールデンクロス」が示現

(出所)Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2015/1/1~2019/11/6)